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「共通一次世代」山中伸弥教授から、医学部受験生が学ぶこと

2012/10/12

 思えば、山中伸弥京都大学教授は、わが国で1979年に導入された「共通一次試験(現・センター試験)」を受験した最初のノーベル賞受賞者です。

 “考えに深みがない”とか、“じっくり問題を解く姿勢に欠けている”など、何かと批判の対象であった「共通一次世代」のトップランナーとしての“産声”を上げたわけです。けれど、彼が発した産声は、決して深みがないとか、じっくり考える姿勢に欠けているといった、そしりからは程遠く、例えば御託宣のような深い言葉の間に、ユーモアたっぷりの挫折の自虐ネタをうまくちりばめ、秀逸この上ない洗練されたものでした。

父親の背中を見て育ったプレゼンの名手
 受賞当日・翌日のどの報道でも、山中教授を評して「天才」とか「努力家」という通りいっぺんの表現はほとんど見当たりませんでした。世界的な事業を成し遂げた日本人に対するわが国のマスコミ報道の仕方における良き成熟ぶりが見て取れるのと同時に、山中教授自身によるプレゼンが硬軟を取り混ぜ、記者相手に非常にうまく伝わる卓抜な形で展開された証左であると感じました。

 そう、彼はプレゼンの名手です。東大阪の町工場の経営者を父に持った彼は、恐らく自分よりも若い地銀の融資係を相手に何度も下げなくてもいい頭を下げ、何度も企画書を作り直し、何度も何度もけんもほろろにあしらわれながら、家族と従業員のために懸命にプレゼンを行った父上の後ろ姿を目に焼き付けていたのでしょう。彼は超一流の研究者として、また文部科学省やあらゆるスポンサーへのTough Negotiator としても、類まれな傑物であることがうかがえます。

 そして受賞当日のインタビューでは、日本という国や、研究仲間・家族への「感謝」という言葉を何度も口にし、不思議なことに、彼が吐くそのクリシェ(常套句)がとても神々しいものになっていました。

自虐ネタを挟み込む、話の組み合わせの妙
 名Presenterとして、「天才」とか「努力家」という薄っぺらな評言を退けられるもう一つの理由に、山中教授の論の立て方、すなわち話の運び方の巧みさがあると思われます。アメリカ留学先の研究所の所長から聞いて感銘を受けた「Vision, and Hard Work」という言葉の深みを彼が語る時、あるいは「真理に向かって一枚一枚ベールを剥いでいく。最後の一枚を剥いだ人の業績がたたえられがちだが、それまでのベールを剥いだ名もない研究者たちの努力を忘れてはならない」といった心に響く言葉を彼が語る時、「自分は手術が下手くそでジャマナカと呼ばれていた」などという自虐ネタを挟み込むのです。

 関西人の特性なのでしょうか、“深い感動話”だけをストレートに出すことへの照れがあるのでしょうか。いずれにせよ、その話の組み合わせの妙に、面接での自己アピールが苦手な受験生たちは学ぶことが多いはずです。

 ことに暗記を嫌う医学部受験生は、彼の中学時代のエピソードを見ておくべきです。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

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すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
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