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入試問題が“的中”するとはどういうことか

2012/01/11

 成人式と並ぶほどの国民行事となったセンター試験。受験生にとっては、いよいよ本格的な入試シーズンの到来です。夜遅くまで勉強していると、眠気のせいか、時々「今お前がやっているこの問題が、そっくりそのまま入試に出るよ…」という魔法のようなささやきが聞こえてくることがあります。自分だけが受験で苦労していると思いがちな、一人ぼっちの受験生にしてみれば、何だか神様が自分だけに教えてくれたご褒美だと錯覚してしまいます。

「この的中は、偶然ではない、必然だ」
 ところで、問題的中とは何でしょうか―。かつてある大手予備校の模試の国語問題がそっくりセンター試験に出て大騒ぎになったことがありました。予備校側が、プロパガンダもあってそのことをマスコミで大いに喧伝したものですから、出題した国語の教師は一躍全国区的な有名人となりました。

 その先生曰く、「英語、国語の大学入試問題は大体、前年の6月頃から作成に入る。だから6月時点で、国語なら刊行されたばかりの評論文から、英語ならその頃発表されてまだ邦訳がなされていない段階での英文から出題される。私はそれを踏まえて、同時期に刊行された書物を一通り読み、入試で課すにふさわしい部分をチョイスし、センター問題にふさわしい設問を作った。この的中は、だから、偶然ではない、必然だ」。

 この先生の言を信じるなら、英語、国語の問題的中とは、まず出典を的中させることと、受験のプロが本番入試にふさわしい設問を作り得たかで決まるといえます。ちなみに、この大手予備校の講師採用の基準は、「生徒を沸かせる、惹きつける授業ができるか」ではなく、「模試、テキストをきっちり作れるか」だということです。

 数学や理科においては、問題が的中するといっても、一字一句、数字や記号も全く同じということは、まずあり得ません。従って、同じ予備校に通い、同じテキストを使って勉強して、同じ大学を受けても、ある受験生A君は「予備校でやった問題が出た」と言い、別の受験生B君は「見たこともない問題ばかりだった」と言います。これは一体何を意味するのでしょうか。

合否を決めるのはrecognize/identifyの能力
 「分かる」という日本語を英語に訳すとき、場面によって様々な動詞があることを受験生は教わります。「分かっている、知っている」という状態動詞ならknow。「理解する」というニュアンスならunderstand。「これまで眼前にあったのに気づかなかった、今それに気づく」ならrealize。「記憶にあるものと眼前にあるものが一致する、認識する」ならrecognizeもしくはidentifyです。入試問題が的中したという件について言えば、くだんのA君は、recognize/identifyでき、B君は、recognize/identifyできなかったことになります。

 recognize/identifyは、例えば、同窓会で20年ぶりに会った旧友の顔かたちがすっかり変わっていても、その旧友が「誰であるかが“分かる”」とか、交番に貼ってある指名手配犯の写真と同じ顔をした人物を見かけて「あ、この人だ、と“分かる”」場合に使います。ただし、後者が前者ほど頻繁に起こるわけではないことは、10年以上もずっと同じ指名手配犯の写真が貼られ続けていることからも明らかです。一枚の写真からでは、その人の他の表情までrecognize/identifyできないのでしょう。

 これを受験生に当てはめてみると、A君もB君も元の問題をどちらも見たことはある。ただし、A君は何度も繰り返し見たり類題を演習したりしていたので記号や数字が変わってもrecognize/identifyできるが、B君は、recognize/identifyできるほど見たり演習をしたりはしなかったから、少しずらされただけでもrecognize/identifyできなかった、すなわち初めて見る問題に出くわした、ということになります。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

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