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今年の私立医学部入試に二つの特徴

2011/04/25

 2011年度医学部入試を振り返るにつけ、今年はとても重い事件(京大カンニング事件、東日本大震災)が立て続けに起こったこともあって、暗欝な気持ちとともに、わずかな時間に受験生をはじめとする若者を取り巻く時代状況が大きく転換したな、という印象を受けます。

 とはいうものの、私立医学部入試そのものは良くも悪くも、前年、前々年とほとんど変わらないまま、相変わらずの高倍率で激しい競争が繰り広げられました。不景気を背景とする一般大学生の就職難を見ているせいか、医学部を目指す受験生、特に女子の医学部受験生の数は増えるばかりです。

 意外に思われるかもしれませんが、学生はいつの時代も保守的なものです。景気や世間の風潮といった時代の表層部分によって容易にかく乱される弱い存在です。思慮深くシニカルに構えているように見えながら、その実、強いカリスマにはあっさりとなびいてしまいます。

 「医学部を出て医者になったからといって、そんなに恵まれた存在にはならないよ」といわれても、あまり能力があると思えない人まで、医者という国家資格ゆえに何となく得しているように感じられる光景を目にしてしまうと、ある種消去法で医学部志望に方向転換してしまう、ということもあるようです。若者には、受験界の1ジャンルにすぎない「医学部」というものが、どうにも魅力的な存在に映るようなのです。

入試日がほとんど重ならなかった私立医学部
 今年の私立医学部入試を微視的に見ていきましょう。今年度入試を振り返ると、二つの特徴が見えてきます。一つは、1月15日、16日にセンター試験が行われた後、19日の岩手医科大学1次試験を皮切りに3月18日の大阪医科大学後期2次試験に至る約2カ月に及ぶ私立、国公立医学部受験の期間において、複数の大学の入試日があまり重なることなく実施されたことです。医学部を持つ大学間で、日程調整がうまく運んだのでしょう。これは昨年あたりからの傾向です。

 これがどういう結果をもたらしたかというと、(1)受験生は、多数の医系大学を受験することができ、合格の可能性が増えたような気になれた、(2)大学側は受験生が増え、受験料収入が増えた、(3)第1志望でなくてもとりあえず先に合格した大学に入学手続きをする学生が増え、補欠合格の回りが鈍くなった―です。

 (1)については、1次試験に関して、1月22日に川崎医大と東邦大医学部が、25日に自治医大2日目と愛知医大が、26日に順天堂大医学部と兵庫医大が、29日に関西医大、北里大医学部、獨協医大が、30日に近幾大医学部前期と埼玉医大前期が、2月1日に久留米大医学部と聖マリアンナ医大が同日受験、すなわち重なっていました。ただし、これらは大学の所在地が全く異なっており、受験生がいずれを受けようか、あまり迷わないように配慮されていたように思えます。

 2月3、4、5日にはそれぞれ、帝京大医学部1日目と東海大医学部2日目、帝京2日目と福岡大医学部、帝京3日目と東京医大が重なっていましたが、これは帝京大医学部が従来の3日連続の試験日程を崩さないため、やむを得なかったと考えられます。確かに、受験生は複数受験が可能であればあるほど気分的には落ち着きます。

 また(2)のように、大学側にとっても受験生が増えた分だけ受験料も多く取れます。表面上、受験生と大学の双方にとって「win win」の結果になるわけです。私立医学部の受験料は1大学6万円で他学部の受験料よりはるかに高いですから、親の負担は増すばかりですが、この時期、親にとっても背に腹は代えられない。そこを大学側もうまく突いている、ということです。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

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すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
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