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大震災、医学部受験屋にできることとは

2011/04/05

 東日本大震災の発生から25日が経ちました。多くの方が亡くなられ、多くの方がいまだ被災状態の最中におられます。何ということでしょう。テレビが映し出す津波や原発の映像は、繰り返される度にリアリティーは失っていくのですが、残像のように私の脳髄にへばりつき、しばらくの間、言葉を発することができない失語症状態が続きました。

 地震の時、私は東京のお茶の水校校舎にいました。16年前の阪神・淡路大震災の時は、大阪府茨木市にいました。ともにわずかに急所を外した所にいたことになります。揺れの大きさは16年前の方が大きく感じましたが、揺れている時間ははるかに今回の方が長かったです。今回の地震は、さらに津波、原発事故へと続いた点で、16年前より被害の規模がはるかに大きくなりました。

 阪神・淡路大震災の間接的被害者の一人であり、このたびの大震災では幸い被害を被らなかった私が考えたことは、以下の4点です。

(1)怪しげな街頭募金には応じない
(2)自分でいらなくなったものを寄付と称して被災地に送らない。医者でも自衛隊員でもない自分にできることはとりあえずできるだけ多くのお金を送ることだ
(3)被災者の方々には、外からの支援はありがたく頂戴してもいいが、過剰にありがたがる必要はないと言いたい。ありがたがる度合いは、単純に金銭に還元した場合の高低によればよい
(4)機に乗じて付け込んでくる連中の悪業に対しては断固たる対応をし、やられる羽目になったらその恨みを忘れないでほしい

 海外メディアは、略奪、強盗がほとんど見られないことを取り上げ、日本人の節度ある態度を褒めたたえていますが、被災地域の銀行ATM機の中身は、自衛隊が地域内に入った時には、既に誰かによってすっからかんにされていたとの噂もあります。海外メディアは、日本人の美徳をことさらに強調することによって、機に乗じた悪人どもの犯罪行為を隠蔽しようとする意図があるのではないかとも疑いたくなります。こういう見方をする自分を、実は、多少情けなく感じないわけでもありません。しかし、かつて不幸のドン底にあり、今は不幸のドン底にいるわけではない者こそ、一番良く物が見えるというのも、一面また事実でしょう。

 被災地支援において一番良く働いてくれている外国であるアメリカも、沖縄県民をボロカスにののしって更迭された前米国務省メア日本部長をすぐに日本の震災支援の調整役に返り咲かさせるなどの態度を取っています。東北地方への復旧作業に回るために手薄になった自衛隊のありようを見てか、尖閣諸島に異常接近してきた中国ヘリ、放射能測定と称して領空ギリギリまでやってきたロシア戦闘機、この時とばかりに竹島実効支配を強めようとする韓国など、いわば火事場泥棒的な行為にも、私たちは目を配っておく必要があります。

東日本の静かな力強さが日本を救う
 私は、日本は、必ず自分自身の力で復興できると信じています。

 先日、マスク姿が目立つお茶の水界隈を歩いていると、後ろから走ってきた中年の男が私の横を通り過ぎる時、私と、脇に置いてある自転車にぶつかり、その自転車を倒してしまいました。自転車が私の方に向かって倒れたこともあり、むっとしつつも仕方なく自転車を起こそうとすると、そばにいた若い女性も無言で手伝ってくれました。通り過ぎて行った中年も振り返って「あ、すみません」と手を挙げ、自転車が元通りになるのを見届けると、軽く会釈してそのまま走り去りました。何ということもないない光景です。

 私はこれが関西だったらどうだっただろう、と思いました。私は、おそらく自転車を起こそうともせず歩き出したでしょうし、通り抜けて行った中年をしばらくにらんでいたはずです。ぶつかってきた中年も、おそらく振り返りもしなかったでしょう。倒れた自転車は、それが自分自身の通行の邪魔になると判断した誰か別の通行人によって、いやいやながら起こされたのではないでしょうか。私という人間はどこにいても私ですが、関西から東京に来ると、自然と態度が変わるのが自分でも分かります。私をそうさせるのは街の風景であり、周りの人々の空気です。

 阪神・淡路大震災がどれだけの期間を経て完全復興したかについては異論がありましょうが、発生から約5年を経た2000年1月14日に仮設住宅入居者がゼロになっていますから、少なくともおよそ5年かかったといえるでしょう。しかし、今回の大震災からの復興は、5年もかからないのではないでしょうか。

 東日本を代表する東京の人々の、事変に冷静に対処している姿を見ていると、自然とそう信じられるのです。海外メディアが褒めたたえる節度を持って粛々とことに対するあの姿勢が、また、私のような下品な関西人をも多少は上品に変えてしまう東日本の静かだが力強いあの空気が、爆発力はあってもしょせんは長続きしない関西の気風より、日本そのものの完全復興という大事業には向いており、大きな力を発揮するのではないかと思えるからです。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

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すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
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