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受験勉強の“我流”ほどナンセンスなものはない

2011/02/24

 私立医科大学の大半は受験が終わり、正規合格者の発表も終わりました。いよいよ国公立2次試験です。あとは、3月いっぱい、場合によっては4月の初旬まで補欠合格者の発表が続きます。

 ほとんどの私立医系大学受験生は補欠合格を待つため、親子そろってイライラの極致状態が1カ月以上続く場合もあります。ただ、中には、「補欠合格者候補」という形で、「正規合格は勝ち取れなかったものの、あなたは補欠合格者でも上位の方ですよ、合格の可能性は大きいですよ」と知らせてくれる大学もあり、その知らせを受け取った受験生とその親は、まだ比較的穏やかな気持ちを維持できます。

成績は同レベルでも合否に差が出た3人
 ここにA君、B君、C君という公開模試の成績はほぼ同じくらいの医学部受験生がいます。

 現時点での成果といいますと、私が主宰する進学塾ビッグバンに所属するA君は2校から正規合格をもらい、3校からは補欠通知をもらっています。受験校のうち1校だけが補欠通知もこない「落ちた」状態です。

 B君は、以前、1年だけ進学塾ビッグバンに所属していたのですが、ここ2年間は、「宅浪」状態。参考書と問題集を使って近くの図書館で勉強していて、模擬試験を学習スケジュールの核に置き、ときどきビッグバンに質問をしにやってきます。この子は、今年8校ほど私立医学部を受験したのですが、すべて補欠もこない「落ちた」状態です。

 C君は、4浪で、ずっと大手予備校を渡り歩いていたようですが、今年は、現在も私が英語を教える大手予備校に所属しており、授業の合間によく質問、というより世間話をしに来ます。「先生。今年も一つも結果が出ていません。ははは」と、いつもの明るい口調で電話してきました。

 結果の出ているA君に聞いてみました。A君は今年3浪目です。1年目は大手予備校に所属していたもののほとんど行かず、2年目はどこにも所属せず、それこそB君のように、宅浪状態で図書館とかレンタル自習室で勉強していたそうです。1年前、お父さんに連れられてビッグバンにやってきました。業を煮やしたお父さんが「3浪目は医系予備校で」と勝手に決めたそうで、本人の、とても気が進まなさそうな顔を今でも覚えています。

 彼との会話はこんな内容でした。「ビッグバンの授業でやった問題が、実際入試に出たんですよ。しかも1つや2つではないんです。見た問題だから解けたんです。だって、僕の頭では、たった60分かそこらの試験時間で、新しい問題を解けって言われたって、そりゃ無理な話です」と彼。「参考書や模擬試験で出た問題が的中したってことはなかったの?」と聞くと、「なかったと思います。見た問題は、どの先生のどの授業で、ってはっきり覚えていますから」。私も参考書・問題集をいくつか出していますし、模擬試験作成の経験もあります。そのときの心の有り様を反芻してみました。そして私は改めて気付きました。

 参考書・問題集を執筆する時、素材としてチョイスする問題ははっきり言って「説明しやすい問題」です。具体的には、一回ヒネリがあるぐらいの問題を選びます。参考書に限らず書きものというのは必ず規定枚数があり、その範囲内で“わかりやすく、親切に”をモットーに書かねばなりません。でないと、本が売れないからです。参考書・問題集の執筆コンセプトは、まず「売れること」であって、これを読んだ人を「受からせること」ではないのです。だって、そもそも、例え予備校教師と言えども、目の前にいるわけでもない幻の読者を「合格させたい!」なんていう強い“愛情”が湧くわけはないでしょう。

 一方、模擬試験のコンセプトは、種類によって若干異なりますが、大体平均点を6割ぐらい、また「6割正解者」がボリュームゾーンの中心になるように、発注元である予備校側から要請されます。そして、偏差値の分布が大きく偏らないように作るのがベストの作り方です。

 しかし、入試では、大体6割ぐらいが合格ラインと言われています。よくよく考えると、模試のように6割正解者がボリュームゾーンに来ると、競争率が10倍ほどになる私立医学部入試では困ってしまうことになります。おそらくボリュームゾーンは、3割正解者あたりに固まるように作られているでしょう。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

松原好之の「子どもを医学部に入れよう!」
すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
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