日経メディカルのロゴ画像

数学参考書はレベルが一段低く別解が多いものを

2011/01/11

 医学部受験に向けての数学の参考書選びは、昔と今の受験数学のありようの違いを知ることが前提です。昔は旧帝大では、超難問が6題中2~3題必ず出て、まずこの解けない難問をいかに素早く排除するか、そして、残りの問題を的確に解いて満点ではなく“合格点”をいかに確保するかが問われていました。

 しかし今では、そのような難問が影を潜め、旧帝大でも、医学部なら合格者は満点近く取ってきます。つまり、全体に数学は易しくなり、全問正解を目指し素早く正確に解くことが課題になります。それを前提に、子どもの数学参考書・問題集選びに付き合ってください。

 たとえば子どもの数学の実力が、10段階の5とします。大きな書店に行くと、「超難問…」とか「国公立医学部合格のための…」と銘打った10レベル、9レベルの参考書問題集から、それこそ百ます計算から始めるような1、2レベルの参考書・問題集まで並んでいます。この中で、5段階レベルの子どもに選ばせると、多くの子どもは、6とか7とかのレベルの参考書・問題集を選びます。

 これがそもそも間違いです。もし、6、7レベルの参考書問題集を買ってくると、さすがにその夜だけは解こうと試みます。5題中1問でもできると、子どもは狂喜します。後ろの答えを見ると確かに正解です。するとこう言います。「俺、5だと思ったけど、6、7の力あるんだ」と。いつの間にか、他の4問を解けなかったことは不問に付しています。

 確かに何であれ自信は大切ですが、根拠のない自信はその後の向上心にはつながりません。案の定そういう子どもは、次の日は「俺には6、7の力があることが分かったから、今日は休んでいいだろう」などという理由をつけて昨日買ったばかりの参考書・問題集を広げません。それが積み重なって、せっかくの問題集もほとんど手を付けないまま部屋の片隅に追いやられることになります。

 それではだめなのです。まず参考書・問題集は、5レベルの子なら一段階下の4レベルの参考書・問題集、しかも別解などが詳しいものを選ぶべきです。彼は当然5題とも何とか解けるのですが、ちょっと考える子なら、解くのに結構時間がかかるのが気になります。後ろの答えを見ると、確かに自分の解き方もあってそれはそれで正解だが、その横に別解があるのに目が行きます。たとえば自分は「2次関数」で解き、それは確かに間違いではなかったが、別解では「ベクトル」を使って解いてある。しかも割いてあるスペースが「2次関数」の解法より狭い。そこで気付きます。「ということは、ベクトルを使った方が素速く解ける!」

 ここで余力の残っている子はベクトルで解く方法を覚えます。次回からはこの手の問題は2次関数よりベクトルで、ということを学びます。翌日もその4レベルの参考書・問題集をどんどん「素速く解く」喜びで突っ走って、たちまちその本を終えるでしょう。ひょっとすれば、そこに出ていた問題とその類題を、今後は間違いなく時間内に解けるようになるでしょう。彼はこの時、6、7の段階に差し掛かっているともいえます。親としては、助走期間にちょっと手を差し伸べてやるだけで子どもの実力アップに寄与できるわけで、参考書選びは非常に重要だということがご理解いただけると思います。

数学は国語力がある人が強い
 さて、もしいい塾に通っていたり、既にいい先生についていたりしたら、6、7段階の参考書・問題集を選ぶのも一法でしょう。うちの塾では、偏差値が50そこそこの子には実教出版の『10日あればいい』シリーズの数I・A、数II・B、数III・Cを副教材としてやらせます。60を超えた頃には、東京出版の『大学への数学 1対1対応の演習』シリーズの数I・A、数II・B、数III・Cに進ませ、さらに伸びれば、昔ながらの『大学への数学 スタンダード演習』シリーズ(東京出版)まで行かせます。

 50に達していない子の大半は、まだ全部を履修していないか、履修していても穴だらけの段階で、自立できていないわけですから、その子用の基本問題集を見つけてきて個別に解説してあげたり、一人ひとりに合ったオリジナルテキストを作成して、それで少なくとも偏差値50ぐらいまでは引き上げることを考えます。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

松原好之の「子どもを医学部に入れよう!」
すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
本連載の著者、松原好之氏の
『親子で目指す医学部合格 受験のプロが教える難関突破最新ノウハウ』
好評発売中

 本連載の著者、松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウを書き下ろした書籍『親子で目指す医学部合格 受験のプロが教える難関突破最新ノウハウ』がこのほど出版されました。
 東京医大事件、医学部入試新規範、学費大幅値下げ、偏差値上昇……。大変革期に入った医学部入試の現状と今後の方向性を、医系予備校「進学塾ビッグバン」で、数々の “落ちこぼれ” を難関大医学部に合格させてきた松原氏が鋭く解説しています。最新の受験テクニックは私立医大と国公立大に分けて詳説。また、医師という職業のキャリアパスについても、最新データを基に解説しています。子どもを医学部に入れたい父母、医学部受験を目指す中高生。浪人生、高校の進路指導担当者必携の1冊です。
(松原好之著、日経メディカル開発、1800円+税)

この記事を読んでいる人におすすめ