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受験の理科を制するのは「数感」である

2010/12/13

 前回に引き続き、今回は理数科目、特に理科について受験生の子どもの参考書選びに付き合うときのコツについてお話ししましょう。

 理数科と一口に言いますが、「理」と「数」は全く違います。数学が好きでも理科の嫌いな子、苦手な子はたくさんいます。なぜなら、数学は純粋な抽象の世界で、理科、特に化学や生物は、具体的な現実世界だからです。物理の場合は、まず現象から入っていき、次第に抽象的な法則、数式を学んでいく学問ですが、そもそもその現象が具体的にイメージできないと、そこから苦手意識、ひいては嫌悪感さえ起きてきます。化学や生物になると、まず現象そのもの(化学反応や光合成など)に興味が全く持てないと、苦手意識が生まれます。

灘高では、「高2まではあまり理科を教えない」
 わが子が理科が嫌いな子だったらどうしたらいいか?もし理科のどの分野でもいい、一つでも興味を抱くことがあれば、学習参考書などとせこいことを言わず、講談社のブルーバックスシリーズなど、いくらでもその筋のわかりやすく書かれた科学入門書があるので、それを買い与えるのも一法だと思います。また、例えば医学部の生物受験に必須の『生物図表』(浜島書店)をじーっと見つめている子だったら、それはそれで医学部行きの素質大いにありです。生物に関しては放っておいても得意になってくれるでしょう。

 灘高校の先生に聞くと「灘では高校2年生まではあまり理科を教えない。教えるとその魅力に憑かれてしまって、入試に必要な英、数といった『基礎学問』への修錬がおろそかになる。高校3年になってから理科に手をつけてもうちの生徒なら遅くはない。1年足らずのうちに他校生をごぼう抜きにできる」とのこと。「さすが灘は別格」と感じたものですが、「高2まではあまり理科を教えない」という教育方針は確かに一理あると思いました。

 上の息子が小学校4年の秋に、灘中学の説明会に親子連れ立って出かけたことがあります。入試担当の先生による学校説明の後、灘高OBの東大院生が白衣を着てなにやら重そうなバケツを提げて出てきました。「これは液体窒素です。ちょっと教授の目を盗んで研究室から失敬してきました」と言って笑わせた後、「今から、超低温状態において電流が恒常的に流れ続ける現象を実際に見てみます」と言って実験をスタートしました。

 大勢の灘中受験生の卵たちがこのOBの周りに殺到しました。私たち夫婦も興味を持って後ろから見ていると、電源もないのに豆電球に光が灯りました。OBの口上も巧みだったせいでしょう、「うわーっ」という子どもたちの喚声が聞こえました。

大歓声の理科実験に見向きしないわが息子
 ふと、後ろを振り返ると、わが息子はひたすら持ってきたゲーム機で遊んでいました。この時「こいつは理科好きの子には育たんな」と悟りました。案の定、灘中はおろか、受けた私立中学はすべて落ち、地元の公立中学に行かざるを得ませんでした。灘中など偏差値の高い関西の私立中学の理科の入試問題などは、興味もしくは素質がなくては高得点が望めない内容になっています。東大合格者の総人数ではトップではない灘高が、こと理IIIでは、2位以下を大きく引き離してトップであり続けているのもわかる気がします。

 さて、私の息子ですが、理科はともかくせめて算数、数学くらいはということで、小学校5年生の時に妻が、陰山英男先生の百ます計算の本を買ってきて、時間を測って朝10分間やらせることにしました。「昨日はここまでできたね、じゃあ今日は…」というふうに、ゲーム好き=バトル好きを利用しておだてながらやらせたところ、計算力だけはメキメキつきました。

 すると中学受験には間に合いませんでしたが、「ゆとり」でさらに薄っぺらな教育内容になった公立中学では数学がぶっちぎりでできるようになり、低レベルの数学には確固たる自信を持つようになりました。もちろん、本人はこれが低レベルの数学とは気づいていませんでしたが…。でもそれでいいと思いました。6年後に待ち受ける大学入試の理数もつまるところ、計算力の差で勝ち抜けることを知っていたからです。

 計算力がつくということは「数感」が冴えることを意味します。子どもの頃、そろばんのできる子は必ず勉強もよくできた、ということを思い出せばわかると思います。

著者プロフィール

松原好之(「進学塾ビッグバン」主宰)●まつばらよしゆき。近著に「”逆算式勉強法”なら偏差値40でも医学部に入れます」(講談社)、「9割とれるセンター試験の”逆算式勉強法”」(KADOKAWA中経出版)がある。

連載の紹介

松原好之の「子どもを医学部に入れよう!」
すばる文学賞受賞作家、大手予備校のカリスマ英語教師、そして医系予備校「進学塾ビッグバン」の主宰者である松原好之氏が、医学部受験の最新ノウハウや、中高生・予備校生の子どもとの付き合い方などを指南します。
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