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検察官・裁判官に対する医学教育の実際

2019/09/10
池田 正行

 「ドクターGと仕事で御一緒できて光栄です」

 国敗訴の可能性が高いと考えられていたにも関わらず、私の意見書で形勢が逆転したある事案の最終局面、私が証言する期日(法廷での審理をこう呼ぶ。刑事裁判の公判に相当)の前日、東京法務局で行われた長時間の打ち合わせの休憩時間のことでした。飲み物を買うために寄った局内の地下売店で、担当の若手訟務検事から清々しい表情で声をかけてもらいました。

 その1年前、初めての打ち合わせの際、たまたま北陵クリニック事件に対する私の活動が担当チーム内で話題となり「あれは全部でっち上げですから」と言い放った私を見て、顔が歪んでいた彼から、そんなふうに声をかけてもらえるようになった時、教育が世の中を変える手応えを感じました。

 検察官だけはありません。裁判官も医療訴訟に関わります。にもかかわらず、裁判官にも医学教育を受ける機会が全くありません。このため、今日もどこかでトンデモ医療訴訟が行われています。私はそんな訴訟の品質向上を目指し、検察官と裁判官双方の医学教育を2015年1月から始めました。といっても新たに塾を開いたり生徒を募集したりしたわけではありません。矯正医療に対する国家賠償訴訟(国賠訴訟)という既存の行政訴訟を利用した、コストゼロのOn the Job Training(OJT:実地訓練)です。

著者プロフィール

池田正行(高松少年鑑別所 法務技官・矯正医官)●いけだまさゆき氏。1982年東京医科歯科大学卒。国立精神・神経センター神経研究所、英グラスゴー大ウェルカム研究所、PMDA(医薬品医療機器総合機構)などを経て、13年4月より現職。

連載の紹介

池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」
神経内科医を表看板としつつも、基礎研究、総合内科医、病理解剖医、PMDA審査員などさまざまな角度から医療に接してきた「マッシー池田」氏。そんな池田氏が、物事の見え方は見る角度で変わることを示していきます。

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