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地域医療でこそ臨床研究・英語論文を
旭中央病院での実践より

2013/02/26

 「地域医療」って奇妙な言葉です。だって医療はもともと地場産業ですもの。だから、臨床研究も地域医療でこそやるものです。「大学でなければ臨床研究ができない」との思い込みは、思考停止にほかなりません。

 臨床研究の目的は、「自分と同じ病気に悩む患者さんのためならば」と、その研究に協力してくれた患者さんの尊い気持ちに応えることです。具体的には、論文として発表することによって研究成果を他の医療者と共有し、類似の病態・疾患に悩む患者さんの診療でその成果を活用してもらうことです。だとすれば、大学病院よりもはるかに地域に近く、多くの患者さんを診療する地域医療の現場からこそ、臨床研究の成果を出していく意義があるでしょう。

「英語にできない理由探し病」への処方箋

 せっかく臨床研究をしても、論文として発表しなければ、患者さんの尊い気持ちを無にしてしまいます。このことが理解できれば、英語で論文を書く意味も自明です。国内に限らず広く海外でも自分の研究成果を活用してもらうためです。「英語論文」という出口を明確にすれば、研究の企画・立案の段階からより質の高い仕事をしようという意識が高まり、結果的に、英語論文にできないような質の悪い臨床研究も減ります。

 ところがここでまた頭をもたげてくるのが、「地域医療現場では英語論文にできるような質の高い臨床研究なんかできるわけがない」というもう一つの思考停止です。ではこの思考停止は、一体どう治療すればいいでしょうか?

 答えは、「特別な治療は不要」です。実例を示せばいいだけです。これまで何度も示してきたように、研究費も大型設備も一切使わずに大学とは独立して、地域医療現場ならではの臨床研究をトップジャーナルに載せることはいくらでもできます1)。さらに、臨床研究の原点である症例報告2)ならば、より容易に英語論文が書けます。それも一生に一度出会うかどうかもわからないような珍しい症例である必要は全くありません。むしろ逆に、今後の自分の診療に使えるという手応えを読者に実感させる、普遍的な臨床の知恵を世界中に伝えるのが英語の症例報告の使命です。

著者プロフィール

池田正行(高松少年鑑別所 法務技官・矯正医官)●いけだまさゆき氏。1982年東京医科歯科大学卒。国立精神・神経センター神経研究所、英グラスゴー大ウェルカム研究所、PMDA(医薬品医療機器総合機構)などを経て、13年4月より現職。

連載の紹介

池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」
神経内科医を表看板としつつも、基礎研究、総合内科医、病理解剖医、PMDA審査員などさまざまな角度から医療に接してきた「マッシー池田」氏。そんな池田氏が、物事の見え方は見る角度で変わることを示していきます。

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