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米国でのプラセボ治療の実態

2008/11/07

 今や、プラセボによる治療は、一般の外来、特に院外処方では不可能に近い気もする。だが、乳糖を服用させたり、生理食塩水を注射することだけがプラセボ治療ではない。

 今回紹介する論文にもあるが、例えば、上気道炎をしつこく訴える患者に抗菌薬の処方を追加したり、全身倦怠を訴える患者にビタミン剤を処方することも広義の「プラセボ治療」と考えれば、われわれの一般外来でも決して無縁ではないことになる。

Prescribing "placebo treatments": results of national survey of US internists and rheumatologists
BMJ 2008;337:a1938 Published 23 October 2008, doi:10.1136/bmj.a1938

 この論文の序文でも、プラセボ治療のterminological(用語上の)な困難さに言及している。もともとスタンダードな解釈が存在しないわけだが、ここでは、placebo treatment(プラセボ治療)を、“a treatment whose benefits (in the opinion of the clinician) derive from positive patient expectations and not from the physiological mechanism of the treatment itself” → 「治療自体の生理学的機序ではなく、患者のポジティブな期待に由来した有用性がある(と臨床家が考える)治療法」と定義している。

【序文】
 プラセボ治療には倫理的な議論がある。臨床的なアウトカムとしてはポジティブな評価を受けているが、既知の特性やメカニズムに起因するものではない。プラセボは、しばしば「期待効果」として説明される。

 1960年以前は、プラセボ効果を期待してinert substance(不活性物質)を投与することもあったが、その後、実効力のある薬剤介入の発展や、インフォームド・コンセントの重要性が強調さ強化され、プラセボ治療は批判の的となった。プラセボ処方そのものが、詐欺であり、患者のautonomy(自主性)を侵害し、インフォームド・コンセントを阻害するものとされた。一方で擁護派は、プラセボ治療は多くの慢性疾患に有用であり、ごまかしなしに完遂できると主張した。

 プラセボ治療には、糖錠や生食中など、薬理学的活性のない、もしくはほんのわずかな「inert agent」を前向きな期待のもとに使用する治療も含まれるが、ビタミンや抗生剤などの生理学的な活性のある薬剤も、心理的効果を期待して投与することがある。薬理学的効果とプラセボ効果を同時に期待する臨床家も多い。

著者プロフィール

牧瀬洋一(牧瀬内科クリニック院長)●まきせ よういち氏。1984年鹿児島大卒後、同大第一内科入局。大隅鹿屋病院などを経て、95年牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)開業。98年に有床診化(19床)。

連載の紹介

牧瀬洋一の「内科開業医のお勉強日記」
内科開業医として、呼吸器を中心に地域の患者を幅広く診察している牧瀬氏。JAMA、Lancet、NEJM、BMJをはじめ、主要論文誌をインターネットで読むのが日課。興味を引かれた論文を、牧瀬氏が紹介します。

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