医学部を卒業する女性が増えているのは各国同じようだが、その数が「多すぎるのではないか?」という踏み込んだ議論が、“フェミニズム”という大義名分を越えてなされることは少ない。イギリスの医学部卒業生はほぼ3対2の比率で女性が多くなっているようで、この状況について、BMJは賛否両論を掲載し、議論を喚起している。以下はかなり意訳しているので、できれば原文も確認してほしい。
Yes
Are there too many female medical graduates? Yes
BMJ 2008;336:748. doi:10.1136/bmj.39505.491065.94
男性医師より女性医師が多くなることで、将来的に医療スタッフの問題が顕在化するだろう。
医学部に入学する女性の比率は多くの国で増加している。それどころか、今後は男性医師の方が少なくなる可能性がある。女性医師は男性よりもパートタイムの勤務を選びがちなので、業務体制を維持するのが難しくなるほど、パートタイム勤務や出産育児休暇は増加する。60歳以前の引退を希望する女性は多く、就労年数が男性より短いことの影響も出てくるだろう。
イギリスでは実際、General Practitioner(GP)の時間外診療が減っているが、これも女医の増加が一部影響しているかもしれない。若い医師がパートタイムを好むからという指摘もあるが、若手が実際にそういったライフスタイルを選んでいるというエビデンスは乏しい。
女性医師の増加は、教育、研究・開発にも多大な影響を与えるだろう。子どもを持つ研究者の比較では、女性研究者は男性よりも論文数は少なかった(トータル論文数の平均:女性18.3本、男性29.3本)。
医学部や大学院の試験における女性のパフォーマンスの高さを考えると、女性比率が高まるのは無理からぬことという指摘もあるだろう。女性医師には患者中心のコミュニケーションに長けているという特性があるが、実際に求められる診療時間の総量に比べて、供給量が少なくなるという影響は深刻である。