母の吸入抗原が母乳を介して子供に経口投与されるという論文。経口減感作になるかどうかまでは分からないが、免疫寛容を誘導する可能性があるという。欧米向きの授乳礼賛論文の一つと皮肉りたくなる。
Breast milk-mediated transfer of an antigen induces tolerance and protection from allergic asthma
Nature Medicine 2008;14:170 - 175
母乳を通して抗原が新生児に運ばれ、将来のアレルギー性喘息からの防御となり得る。
アレルギー性喘息は抗原暴露への反応による気道閉塞で特徴付けられる慢性疾患で、環境中の吸入抗原に対するヘルパーT細胞(Th2)の不適切な反応で起こる。その頻度は近年増しているが、これは環境的要因によるものと考えられている。
乳幼児期の環境抗原への暴露は喘息の発症に決定的な影響を与える。授乳とアレルギー性疾患の関連を疫学的に調査した研究も数々あるが、結果は分かれている。そこで、授乳中のマウスへの吸入抗原の暴露が、子の喘息の発症に影響するか調べた。
その結果、吸入抗原は母体から子に移行し、免疫寛容の誘導には免疫グロブリンの移行は必要としなかった。
母乳によって誘導される免疫寛容は、授乳中のTGF-βの存在に依存し、TGF-βはCD4陽性レギュラトリーT細胞を介し、T細胞からのTGF-βシグナルに依存する。
母乳を介した抗原の摂取は、アレルギー性気道疾患の抗原特異的な防御につながる経口寛容を誘導する。