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閉経後女性へのカルシウムは心血管イベントを増やす

2008/01/22

 カルシウムサプリメントは血中カルシウム値を増やし、血管のカルシウム化を促進する可能性が示唆されている。高カルシウム摂取が、MRIで発見される脳病変の増加、透析患者の死亡率増加などとも関連があるというデータなどもある。カルシウムといえば、脂質(HDL/LDL)への良好な効果に注目が集まっていたが、血管イベントへの潜在的なリスク要因もあったのである。

 著者らの高齢女性(平均74歳)に対するカルシウムサプリメントの5年間の研究(Am J Med 2006;119:777-85)で、骨塩の減少が抑制され、代謝回転は減少するという報告が、今回の研究データの大本である。そのデータを用いての血管へのベネフィット研究。

Vascular events in healthy older women receiving calcium supplementation: randomised controlled trial
BMJ, doi:10.1136/bmj.39440.525752.BE (published 15 January 2008)

【目的】健康閉経後女性における、カルシウムサプリメントの心筋梗塞脳卒中突然死への影響

【デザイン】無作為プラセボ対照試験

【実施施設】ニュージーランド都市部の大学附属病院

【被験者】 1471人の閉経後女性(平均年齢74歳)。ランダムに2群に割り付け
・カルシウムサプリメント 732人
・プラセボ 739人

【主要アウトカム】5年間の心血管イベント(死亡、突然死、心筋梗塞、狭心症、一過性虚血発作)と心筋梗塞、脳卒中、突然死の複合エンドポイント

【結果】被験者あるいは家族によって報告された心筋梗塞はカルシウム群の方が多かった(31人45イベント vs. 14人19イベント、P=0.01)。

心筋梗塞、脳卒中、突然死の複合エンドポイントもカルシウム群でやはり多い (69人101イベント vs. 42人54のイベント、P=0.008)。

報告されたイベントのうち疾患が確定されたものについても、心筋梗塞はカルシウム群で多い(21人24イベント vs. 10人10イベント、相対リスク 2.12、95%信頼区間 1.01-4.47)。

複合エンドポイントは、カルシウム群では51人61イベントが確認され、プラセボ群では35人36イベントだった(相対リスク 1.47、同0.97-2.23)

ニュージーランドの入院データベースから報告されていないイベントを加えると、心筋梗塞の相対リスクは1.49(同0.86-2.57)で、複合エンドポイントは1.21(同0.84-1.74)だった。

rate ratioは心筋梗塞が1.67(同0.98-2.87)、複合エンドポイントが1.43(同1.01-2.04)。イベント率はプラセボ群 16.3/1000人年、カルシウム群23.3/1000人年であった。

脳卒中(未報告を含めた)の相対リスクは1.37(同0.83-2.28)で、rate ratioは1.45(0.88-2.49)。

【結論】健康閉経後女性のカルシウムサプリメントは心血管イベント率増加と相関。カルシウムのこの潜在的な悪影響は、骨へのベネフィットとバランスで考えなければならない。

著者プロフィール

牧瀬洋一(牧瀬内科クリニック院長)●まきせ よういち氏。1984年鹿児島大卒後、同大第一内科入局。大隅鹿屋病院などを経て、95年牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)開業。98年に有床診化(19床)。

連載の紹介

牧瀬洋一の「内科開業医のお勉強日記」
内科開業医として、呼吸器を中心に地域の患者を幅広く診察している牧瀬氏。JAMA、Lancet、NEJM、BMJをはじめ、主要論文誌をインターネットで読むのが日課。興味を引かれた論文を、牧瀬氏が紹介します。

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