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国際比較で見る日本の医療従事者の劣悪な労働環境

2007/12/06

 Annals of Internal Medicineは、新年の号で米国の医療問題について解説するそうだ。

Achieving a High-Performance Health Care System with Universal Access: What the United States Can Learn from Other Countries
Ann. Int. Med. 2008;148:Issue 1

 当然、米国の医療中心の記述だが、改めて感じることがある。

 主要な医療統計を国際比較した表を見ると、以下のような日本の特徴が浮かび上がる。出生率が低い、出生時余命が長い、高齢化率が高い、肥満者の割合は少ないが喫煙率は高い、臨床医が少ない、入院ベッド数が多い、人口当たりのMRIの数がやたらと多い、医療支出がやたらと少ない――といったところだ。そして、医療費当たりの薬剤コストは先進国の中で飛び抜けて高い!

 国際的に見て、日本の医療従事者のコストは異様に低く見積もられていることが分かる。

 日本の医療従事者たちはおとなしすぎる…。この不当な労働条件の下では医療事故など不測の事態が生じるのは当たり前なのである。

 医療事故の責任を当事者だけに押しつけ、民事・刑事とも厳罰を与えようとする、医療事故調査委員会の制度が今立ち上がろうとしている。恐ろしいことに、その動きに対して日本医師会はむしろ積極的なのである。

 最低レベルの労働安全環境にしておいて、「それはないだろう」というのが実地医家のほとんどが思うことではないだろうか? 医師だけでなく、全医療従事者も他人事ではないであろう。

 一般的に言えば、医療事故は一人の怠惰だけによるものではない。システム上の問題、ひいては、必要な安全対策を賄うに十分でない診療報酬も問題である。当然、国家的問題でもある。にもかかわらず、「謝罪マニュアル」という安直な対応を取ろうとする公的病院の軽薄さは、医療事故が起こった場合に安直に示談で済ませることと合わせ、医療従事者をさらなる窮地に陥れる重大問題である。

著者プロフィール

牧瀬洋一(牧瀬内科クリニック院長)●まきせ よういち氏。1984年鹿児島大卒後、同大第一内科入局。大隅鹿屋病院などを経て、95年牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)開業。98年に有床診化(19床)。

連載の紹介

牧瀬洋一の「内科開業医のお勉強日記」
内科開業医として、呼吸器を中心に地域の患者を幅広く診察している牧瀬氏。JAMA、Lancet、NEJM、BMJをはじめ、主要論文誌をインターネットで読むのが日課。興味を引かれた論文を、牧瀬氏が紹介します。

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