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熱射病の症例―2003年欧州熱波の場合

2007/08/22

 熱射病(Heatstroke)は重症の熱関連疾患であり、核体温が40℃を超え、中枢神経障害を伴うものと定義されている。サウジアラビアや米国の熱帯での経験は数多く報告されている。しかし、ヨーロッパでは、激しい運動による運動性のHeatstroke(Exertion induced Heat Stroke;EIHS)に比べ、高温という外的条件だけによるHeatstrokeは非常に稀であった。

 Heatstrokeについては、年齢、低社会経済状態、慢性疾患、体温調整機能を障害する薬剤などの関連因子が報告されている。また、臨床的記載では、多臓器障害の発生と生存者の後遺症が報告されている。

 NHK・各民放では、運動性のEIHSを、いわゆる日射病の熱射病(古典的・非運動性)と混同したニュースが流され、厚労省でなく、環境省の役人が熱中症担当の専門家としてコメントを述べるという、とても混乱する状況の日本を見ていると情けなくなる。

 ヨーロッパでは、2003年8月1~20日の間、例外的な熱波があり、1873年の記録開始以来の極端な気温であった。120万人の地中海エリアのリオンでの分析。

◆Short- and Long-term Outcomes of Heatstroke Following the 2003 Heat Wave in Lyon, France Arch Intern Med.2007;167(Free full text)

83人について、熱波による28日死亡率、2年死亡率はそれぞれ58%、71%()。
死亡率は熱の程度と臓器障害の数に依存。

多変量解析で、独立して死亡率と関連することが判明したもの。
・施設から来た患者(ハザード比1.98、95%信頼区間1.05-3.71)
・長期降圧薬使用(ハザード比2.17、95%信頼区間1.17-4.05)
・入院中の無尿の存在(ハザード比5.24、95%信頼区間2.29-12.03)
・昏睡(ハザード比2.95、95%信頼区間1.26-6.91)
・心血管機能不全 (ハザード比2.43、95%信頼区間1.14-5.17)

多変量解析で見ると、生存者は1~2年後、劇的な状態の改善を示している。

著者プロフィール

牧瀬洋一(牧瀬内科クリニック院長)●まきせ よういち氏。1984年鹿児島大卒後、同大第一内科入局。大隅鹿屋病院などを経て、95年牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)開業。98年に有床診化(19床)。

連載の紹介

牧瀬洋一の「内科開業医のお勉強日記」
内科開業医として、呼吸器を中心に地域の患者を幅広く診察している牧瀬氏。JAMA、Lancet、NEJM、BMJをはじめ、主要論文誌をインターネットで読むのが日課。興味を引かれた論文を、牧瀬氏が紹介します。

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