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チアゾリジン系薬剤は本当に問題ないか?

2007/05/22

 チアゾリジン系薬剤はインスリン抵抗性改善薬であり、日本ではピオグリタゾン(商品名:アクトス)が広く使われ始めている。5月21日のNEJMの速報として、「製薬会社サイドでない著者ら」によるメタアナリシスが報告されている。

 折りしも、マイケル・ムーア監督の最新作「Sicko」がカンヌで注目されつつある。これは米国の医療問題を扱っており、製薬会社も無風というわけにはいかなくなってくるだろうし、それが当然だろう。

 さて、NEJMだが、エディトリアル(Editorial: Rosiglitazone and Cardiovascular Risk)には、この研究の限界が書かれている。すなわち、製薬会社から得られるデータは限られているため、ややまどろっこしい手段で入手しているからである。逆に製薬会社主導でないので、今回のメタアナリシスは変なバイアスがかかってない可能性もあるが――。

 そういうことを斟酌して論文を読むべきだろう。

◆Effect of Rosiglitazone on the Risk of Myocardial Infarction and Death from Cardiovascular Causes www.nejm.org May 21,2007 (10.1056/NEJMoa072761)

【方法】
公表文献、FDAウェブサイト、製薬企業の臨床トライアルを検討。
メタアナリシスの基準:24週以上の研究期間の研究で、チアゾリジン系薬剤であるrosiglitazoneが処方されてないものを対照群とし、心筋梗塞や心血管死亡のアウトカムデータを利用できるもの。
116の研究のうち、基準に合致したのは42のトライアル。
【結果】
fixed-effects modelによりデータを結合。
42トライアルにおいて、平均年齢は56歳で、ベースラインの平均HbA1c値は約8.2%。
rosiglitazone群では、対照群と比較して、心筋梗塞オッズ比は1.43(95%信頼区間1.30~1.98、P=0.03)
心血管疾患による死亡オッズ比は1.64 (95%信頼区間0.98~2.74、P=0.06)
(図参照)

rosiglitazoneは心筋梗塞増加と有意に関連、心血管疾患が原因となる死亡リスクの増加は境界的に有意であった。
この研究はオリジナルデータにアクセス困難という限界があった。
この限界にかかわらず、2型糖尿病患者にrosiglitazoneを使用するときは、患者や医療提供側は心血管への重篤な悪影響を考慮すべきである。

著者プロフィール

牧瀬洋一(牧瀬内科クリニック院長)●まきせ よういち氏。1984年鹿児島大卒後、同大第一内科入局。大隅鹿屋病院などを経て、95年牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)開業。98年に有床診化(19床)。

連載の紹介

牧瀬洋一の「内科開業医のお勉強日記」
内科開業医として、呼吸器を中心に地域の患者を幅広く診察している牧瀬氏。JAMA、Lancet、NEJM、BMJをはじめ、主要論文誌をインターネットで読むのが日課。興味を引かれた論文を、牧瀬氏が紹介します。

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