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アルコールは重症頭部外傷の予後改善?

2006/12/27

 飲酒運転に対する社会的な関心が高まり、取り締まりが厳しくなったわけで、結構なことだと思うのだが、アルコールそのものには頭部外傷に対して利点がある可能性が明らかになった。

 Journal Archives of Surgeryに、アルコール血中濃度が低~中等度の方が、血中濃度がゼロの場合よりも重症頭部外傷の予後が良かったという報告が掲載されたとのこと。

◆Association Between Alcohol and Mortality in Patients With Severe Traumatic Head Injury Arch Surg.2006;141:1185-1191.

【仮説】鈍器損傷による頭部外傷に関して、入院時アルコール血中濃度(BAC)が入院時死亡率と関連があるのではないか?
【デザイン】後ろ向きコホート
【状況】トロントの外傷センター
【患者】1988年1月1日から2003年12月31日の1158人の重度頭部外傷患者(鈍的頭部外傷による)
【介入】積極的介入なし
受診時アルコール血中濃度に重点
3つのレベルで層別化:
 0:no BAC
 0~230mg/dL未満:low to moderate BAC
 230mg/dL以上:high BAC
【メイン・アウトカム測定】入院時死亡

【結果】重症頭部外傷患者のうち、
low to moderate BACは、no BACより死亡率が低い(27.9% 対 36.3%、P=0.008)。
High BACは、no BACより死亡率が高い(44.7% 対 36.3%)。ただし、統計学的有意差なし (P=0.10)。
人口動態データ・ロジスティック解析補正を用いた外傷要因補正後、すべて統計学的に有意差があり。
low to moderate BAC 対 no BACの死亡オッズ比は0.76 (95%信頼区間 0.52-0.98)。
high BAC 対 no BACの死亡オッズ比は1.73 (95%信頼区間 1.05-2.84) 。
【結論】低~中等度アルコール血中濃度(BAC)は、鈍器による重症頭部外傷患者にとってベネフィットがあるかもしれない。
一方、高度BACでは、入院時死亡に関して予後不良。これは血行動態・身体的影響によるものと思われる。
アルコールは、蘇生した重症頭部外傷患者のマネージメントに一定の役割を果たすこととなる。

著者プロフィール

牧瀬洋一(牧瀬内科クリニック院長)●まきせ よういち氏。1984年鹿児島大卒後、同大第一内科入局。大隅鹿屋病院などを経て、95年牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)開業。98年に有床診化(19床)。

連載の紹介

牧瀬洋一の「内科開業医のお勉強日記」
内科開業医として、呼吸器を中心に地域の患者を幅広く診察している牧瀬氏。JAMA、Lancet、NEJM、BMJをはじめ、主要論文誌をインターネットで読むのが日課。興味を引かれた論文を、牧瀬氏が紹介します。

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