今回取り上げるのは、Journal Watch(Journal Watch Psychiatry.2006.)に掲載されている話題である。これによると、うつ病患者の骨粗鬆症は、抗うつ薬を使って身体的活動性を増して改善させると考える傾向になりそうだが、「neuropsychostelogy」を基礎として、脳、活動性などの行動、骨格の相互関係を明らかにする学問の方向性が示唆されている。後述のNatureの論文も読み合わせて見てほしい。
◆Depression induces bone loss through stimulation of the sympathetic nervous system PNAS.2006.103.16876-16881.
骨粗鬆症と骨折頻度増加と、大うつとの相関が見られる。この相関のメカニズムを利用して、うつの治療が骨粗鬆症や骨折軽減につながるかどうかは不明だった。そこで、この研究者たちはうつの動物モデル(4週間の慢性ストレス状態にしたマウス)でこの問題を研究。
対照としたマウスに比べ、ストレス下のマウスは骨減少し、骨形成と関連するosteoblastが減少。しかし、骨のノルエピネフリンと血中の糖質コルチコイド値がストレス下のマウスで増加した。
骨の交感神経支配の故に、研究者たちはストレス下のマウスにプロプラノロール(β遮断薬)を投与したところ、うつ様の行動は変化しなかったが、骨量の低下が減少した。
次に、副腎を摘出されたマウスでは、コルチコステロンの役割を評価できなかった。ストレス下の場合、副腎を摘出されたマウスは行動にも、骨減少にも変化をもたらさなかった。
ストレス下のマウスをイミプラミン(抗うつ薬)で治療し、うつ様行動減少が見られた場合に、骨形成が対照レベルまで改善した。
イミプラミンにより行動変化が反応しないマウス(サンプルの半分の例)では、骨形成の改善が見られなかった。