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自殺報道の「ウェルテル効果」

2006/10/24

 私が委員の一人である「かかりつけ医通信」でもこの問題に触れたが、数年前に発生した佐世保市の小6女児殺害事件において、「バトル・ロワイアル」という動画の影響が推定された。その後の報道では、メディア・バイオレンスにほとんど言及されてないと思う。

 Lancet(Lancet.2005;365:702-710)によれば、5つのメタアナリシス、1つのシステマティックレビューによれば、テレビ・映画・ビデオ・コンピューターゲームの暴力シーンが、短期的な興奮、嗜好、情緒を呼び起こし、攻撃的、恐怖を呼び起こす行動を生じる尤度(ゆうど)を増す。その影響は10歳代、特に男児に多いという報告がある。米国では、小児科などの学会がガイドラインを策定し、積極的に医師たちが行動を起こしているのである。

 昨今、自殺に関するニュースが続き、「ウェルテル効果」が、ウェブやメール、ブログの世界で話題になっている。メディアと自殺の関係で最初に知られた事象は、1774年出版の、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」 (Die Leiden des jungen Werthers) による自殺増加であろう。

メディアは様々な情報に関して今日大きな役割を果たしている。特に一般の人の態度、信念・行動に強く影響を与える。
そして、行政・経済・社会的行為に重要な役割を果たす。
逆に、メディアは自殺予防に積極的な役割を果たせるのかもしれない。
自殺を考慮している人は大多数がambivalent(相反する感情を持つ)なのである。確信を持っていることは少ない。逆に、自殺に導く多くの要因の一つとして、メディアの自殺に関する報道が存在する可能性がある。

メディアの報道の仕方いかんで、自殺を増加させるかどうかが決まるかもしれない。
・自殺に関するメディア報道のインパクト
・信頼される情報源であるかを示す
・一般的な状況か、特異的な状況なのか
・自殺報道を避けることのピットフォール

自殺方法の出版物による自殺増加
・ニューヨークにおいて、Derek HumphryのFinal Exit(安楽死の方法)という本に関心が持たれ、この方法による自殺増加
・フランスにおける、suicide : la mode d’emploiの出版による自殺増加

著名人(celebrities)の自殺事例は特に大きなインパクトを持つ。

テレビの影響が報告され、Philipsは、自殺ケースの報告後10日まで自殺数が増加すると報告している。

印刷メディアにおいても、公表度の高いストーリーの場合、多くのチャンネルでの多くのプログラムは巨大なインパクトを形成するように思え、もし著名人がそれに含まれるならなおさらである。

舞台でのplayは音楽と自殺との関係は調査されておらず、逸話としてしか存在しない。
PREVENTING SUICIDE A RESOURCE FOR MEDIA PROFESSIONALS(pdf)(日本語訳pdf)


著者プロフィール

牧瀬洋一(牧瀬内科クリニック院長)●まきせ よういち氏。1984年鹿児島大卒後、同大第一内科入局。大隅鹿屋病院などを経て、95年牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)開業。98年に有床診化(19床)。

連載の紹介

牧瀬洋一の「内科開業医のお勉強日記」
内科開業医として、呼吸器を中心に地域の患者を幅広く診察している牧瀬氏。JAMA、Lancet、NEJM、BMJをはじめ、主要論文誌をインターネットで読むのが日課。興味を引かれた論文を、牧瀬氏が紹介します。

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