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造影剤によるアナフィラキシーショック

2006/10/01

 造影剤によるショックはアナフィラキシー反応ではなく、アナフィラキシー様反応と区別され、「アナフィラキシー様反応は、アレルギー反応でありません。アナフィラキシー様反応は、アレルギー反応に関与する抗体であるIgEが引き起こすのではなく、物質自体によって引き起こされるものです」と説明している記述(メルクマニュアル )も存在する。ここでは、「正確な機序は不明であるが、ヒスタミン遊離とマスト細胞の引き金が重症時に関連し、IgEが関連するメカニズムが特定のケースで疑われている」という旨の記述もある上、紹介する資料の表題にも「anaphylaxis」と書いているので「アナフィラキシー」と記述する。

 東京地裁の判決で「造影剤によるアナフィラキシーショック」という、造影剤を用いたCT検査時、検査前に問診を全く行っていないとされて、重大な過失が認められた事例がある。

 担当医師は事前にアレルギーの有無などを問診したが、その問診結果をカルテに記載してなかった。このことには非があるのだろうが、カルテに明記していれば、過失はすべて否定されたのであろうか? 造影剤を使う上での前処置上、何らかのインターベンションが変わったのだろうか? その割には補償額の大きすぎるのではないだろうか? こうした疑問を感じてしまう。患者の死に占める医師の有責性について補償額を求められるのなら納得が行くが、稀な事例で生じたケースに対しても、死を伴えばそれに比例した金額補償を求められるというのは科学性がないと思う。

 BMJのシステマティク・レビューを見れば、アナフィラキシーショックに対しては前処置が有効であるという科学的根拠があるにもかかわらず、アナフィラキシーショックの頻度の少なさで、前処置を否定しているのである。私などはこの論文は十分に科学的であると思うのだが…。

 前投薬が造影剤の重症アナフィラキシーショック予防には有効でないかもしれないが、9つのトライアルのシステマティックレビューにて、造影剤後の生命危機を来すアナフィラキシーは稀であり、メチルプレドニゾロン経口倍量投与でアナフィラキシー予防の可能性はあるものの、投与対象者数が多いので、この有用性に関しては疑問であると結論づけている論文がある(Severe anaphylaxis due to contrast media is rare and prophylaxis unhelpful BMJ.2006;30:333.)。

1975-1996年までの1万11人の成人、9つのトライアルにて、H1抗ヒスタミン(hydroxyzine、clemastine、chlorpheniramine、dimenhydrinate)、コルチコステロイド(betamethasone、dexamethasone、methylprednisolone、rednisolonew6)、H1-H2(clemastine-cimetidine)の組み合わせについて調査。

2つのトライアル:喉頭浮腫が発生
 oral methylprednisolone 2x32mg or intravenous prednisolone 250mg〔3/778人(0.4%) 〕 vs 対照〔11/769人(1.4%)〕 (オッズ比 0.31、95%信頼区間:0.11-0.88)

2つのトライアル:ショック、気管支痙攣、喉頭痙攣が発生
 oral methylprednisolone 2x32mg〔7/3093人(0.2%) 〕 vs 対照〔20/2178人(0.9%)〕 (オッズ比 0.28、95%信頼区間:0.13-0.60)

1つのトライアル:血管浮腫が発生
 intravenous clemastine 0.03mg/kg+cimetidine 2-5mg/kg〔1/196人(0.5%) 〕 vs 対照〔8/194人(4.1%)〕 (オッズ比 0.20、95%信頼区間:0.05-0.76)


 

著者プロフィール

牧瀬洋一(牧瀬内科クリニック院長)●まきせ よういち氏。1984年鹿児島大卒後、同大第一内科入局。大隅鹿屋病院などを経て、95年牧瀬内科クリニック(鹿児島県大崎町)開業。98年に有床診化(19床)。

連載の紹介

牧瀬洋一の「内科開業医のお勉強日記」
内科開業医として、呼吸器を中心に地域の患者を幅広く診察している牧瀬氏。JAMA、Lancet、NEJM、BMJをはじめ、主要論文誌をインターネットで読むのが日課。興味を引かれた論文を、牧瀬氏が紹介します。

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