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「働いてやってもいいよ」と送ってこられても…

2014/05/12
大西洋一

写真1 日本でも有名な総合リゾートホテル、マリーナベイサンズ。

 「私は×年目の○○科医ですが、年末で現在の職場を退職し、来年春より家族でシンガポールに移住予定です。つきましては、貴院での就業も検討したいので、条件等提示をよろしくお願いいたします」

 クリニックの代表メールアドレス宛てに、こんな感じの電子メールが届くことがあります。特にここ数年は増えました。どうも日本のテレビや雑誌が、シンガポールのホテルやカジノなどの娯楽施設(写真1)を特集したり、日本の富裕層がどんどんシンガポールに移住しているといったようなニュースを報じたりしているのが多少関係しているような気がします。

海外ならば日本人医師はどこでも希少?
 当たり前の話ですが、実際はそう簡単に移住できるわけではありません。移住するにはビザの取得が必要ですし、そのためには雇用先をあらかじめ見つけておく必要があります。移住を先に決めているのもどうかと思いますが、クリニックで医師を募集しているわけでもないのに、「働いてやってもいいよ」というニュアンスの問い合わせをしてくるというのは不思議でなりません。

 海外で働こうとする医師は希少で、あたかも日本の僻地と同じようにクリニックは人材確保に困っていると思われているのでしょう。確かに、これが中東やアフリカであればそうかもしれませんが、シンガポールではそんなことはありません。実際、私のところには、毎月10人以上の医師から就職希望の問い合わせメールが来ています。

 問い合わせてくる医師の方々の専門は様々で、内科系はもちろんのこと、外科、小児科、産婦人科など、あらゆる専門科からの問い合わせがあります。実際、当院では様々な専門医が診療を行ってはいますが、それはニーズに合致した科に限られます。

 われわれの患者は主にシンガポール在住の日本人で、ほとんどが日本企業の駐在員とその家族ということになります。なので、患者は働き盛りの30~40歳代の大人と、乳幼児を中心とした子どもたちです。60歳以上の患者はほとんど見かけません。

 シンガポール在住の日本人は3万人近いものの、赴任というかたちで日本からやって来るので、基本的には生来健康で、重い持病のない方がほとんどです。日本の一般的な医療機関のような高齢者や慢性疾患患者がほとんどを占める状況とは大きく内容が異なります。

 当院の患者・疾患構成は、新興住宅地での開業医に近いものでしょう。そういった状況なので、泌尿器科や神経内科、リハビリテーションといった、主に高齢者や慢性疾患患者を対象にした科は一般的に就業が難しいでしょう。また、外来診療のみの当院では、脳外科や麻酔科、放射線科、救急医療なども、今のところニーズはありません。

バカンス気分では働けません
 シンガポールに赴任を希望する動機は人それぞれですが、ちょっと変わったところで意外に多いのが、「子どもの教育を考えて」です。確かにシンガポールは教育熱心な国で、有名なインターナショナルスクール次ページ写真2)もあって英語による教育が基本なので、グローバルな教育環境が整っているといえるでしょう。

著者プロフィール

大西 洋一

ラッフルズジャパニーズクリニック院長

1992年に千葉大を卒業し、同大呼吸器内科に所属。2001年より2年間、シンガポール日本人会診療所にて在星邦人の診療に当たる。03年、ラッフルズホスピタルと共同でラッフルズジャパニーズクリニックを設立。10年には上海にもジャパニーズクリニックを開院。現在はシンガポールに家族を残して上海へ単身赴任し、診療を行う日々。目標は日本にラッフルズ病院を作ること。得意なことはネゴシエーション、苦手なことは英会話。

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