日経メディカルのロゴ画像

どう変わる?外傷外科医の生きる道

2016/06/01
近藤豊

写真1 銃創などの外傷患者を搬送するための救急車

 皆さん、こんにちは。こちらボストンはもうすっかり暖かく、そよ風が心地よい季節となりました。今回は、日米の外傷外科医を取り巻く状況についてお伝えできればと思います。

全米の銃創患者数は年間3万人超
 日本は世界でも類を見ないほどの安全大国です。さらに近年は飲酒運転の取り締まり強化により交通事故の発生件数が減少し、それに伴って外傷患者数も年々減少傾向となっています。

 また、銃規制が徹底されている日本では、アメリカと違って銃創による外傷患者はほぼ皆無です。銃創による外傷患者が日本でどのくらいの頻度で発生しているか、ご存じでしょうか? 日本外傷データバンクの報告(2015年)によれば、2010~2014年の5年間で銃創による外傷患者が医療機関を受診した件数は34件です。全外傷患者に占める割合はたったの0.03%となっています[1]。一方で、この事実は、日本の外傷外科医のほとんどが銃創患者の治療経験がないことも意味しています。

 ここアメリカでは毎日のように銃創患者が発症しています(写真1)。National Trauma Data Bankによれば、2014年に全米で発生した銃創患者は約3万4000人に上ります[2]。全外傷患者に占める割合は約4%ではありますが、外傷外科医が銃創を経験するのは全く稀有なことではありません。そして、銃創は他の外傷と比べて極めて致死率が高いことはご想像の通りです。

 また、外傷患者の中でも6万3000件程度(全外傷患者の約7%)で違法薬物の使用が確認されており、外傷と違法薬物との関係にも根深いものがあります。外傷は治安の良し悪しと密接に関係しており、治安の悪い地域では外傷患者の数も多くなります。

著者プロフィール

近藤 豊

ハーバード大学医学部外科学講座リサーチフェロー

2006年琉球大学卒業。初期研修を沖縄県立中部病院、後期研修を聖路加国際病院で修了。その後、琉球大学大学院へ進学し、救急医学講座講師や附属病院救急部副部長を兼任しながら修了した。救急科専門医、外科専門医。外傷や敗血症を得意分野とする。敗血症やARDSなど救急分野の様々な診療ガイドライン作成を担う。将来は臨床と研究を融合しながら救急医学を追究したいと考えている。趣味は散歩とコーヒー。

この記事を読んでいる人におすすめ