アメリカの一般的な大学院に通うためには、奨学金を得て学費や生活費をまかなう学生がほとんどです。メディカルスクールも大学院に相当しますが、数ある大学院の専攻の中でもけた違いの学費を要します。しかも、研究者になることを前提としたMD/PhDプログラムの学生を除くと、すべての学生が希望する額の奨学金を得られるわけではありません。
日本の医学部と同じように、「メディカルスクールはお金がかかる」ということはアメリカでも常識として知られています。そのため、よほど裕福な家庭出身だったり宝くじに当たったりでもしない限り、メディカルスクールへの進学を考えるほとんどの学生は、在学中の学費と生活費の不安を抱えることになります。
メディカルスクールのカリキュラムは、4年間という限られた時間にあらゆるものを詰め込めるだけ詰め込んだ、非常にハードなものです。このスケジュールをこなしていくためには、アルバイトをしてお金を稼ぐというオプションはあり得ません。そもそも、けた違いに高い学費を授業の合間のアルバイトで捻出できるはずもありません。また、2009.9.30「メディカルスクールにみるアメリカ医学教育の目的とは」で触れたように、independent(独立)という要素が重視されるアメリカ社会では、親や親族からすべての学費を出してもらえる学生は少数派です。
アメリカの医学生のローン事情
それでは、どうやって巨額の学費と生活費を捻出すればいいのでしょう。実はメディカルスクールに通う学生の大多数が、「Financial Aid」と呼ばれる何らかの学生ローンを利用しているのです。
アメリカ医師会(AMA)のデータによると、2007年度にメディカルスクールを卒業した学生の75.5%が10万ドル以上の学生ローンを利用していたそうです。もっと少ない金額を借りる学生がいることも考えると、ローンを利用しない者はごく一握りだと想像できます。学校側もそれを承知しており、入学時のオリエンテーションには学生ローンについての説明会が必ず含まれています。
医学生を対象としたローンは基本的に国が貸し付けており、大きく2種類に分けられます。一つはSubsidized Stafford Loan、もう一つはUnsubsidized Stafford Loanです。前者は借りられる上限金額が低いものの、在学中に発生する利息が免除されます。後者はある程度まとまった金額を借りられますが、在学中から利息が発生します。この2種類の学生ローンを組み合わせることで、取りあえずの学費はおおむねまかなえるように設定されています。中には、食費や家賃、健康保険といった在学中に必要な生活費もローンでまかなえる場合があるようです。
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著者プロフィール
高橋 孝志
ミネソタ大学放射線科研修医
ワシントン州ワシントン大学で電気工学科学士および修士を取得。2008年にウィスコンシン医科大学を卒業後、ミネソタ州Hennepin County MedicalCenterにて、スーパーローテーション方式である Transitional Yearインターンとして勤務。2009年7月より現職。

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