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知っていますか?植物療法のこと(2)
緑色の処方箋に仰天!

2015/11/25
馬場恒春

図1 ドイツの公的疾病保険における処方件数と植物製剤の割合
(文献4をもとに作成)

 前回に引き続き、ドイツの植物療法や植物製剤について、ご紹介してきます。

植物製剤の評判はいかに?
 植物療法に関する患者アンケート調査の結果を見ると、2002年から数年ごとに行われているPASCOE-Studie[1]では、回答者の81%が植物製剤を好意的にとらえています。回答者の約4割は「植物製剤を使ったことがある」と答え、その理由として副作用の少なさ、身体への負担の軽さを挙げています(PASCOE-Studie2002、2004、2007、2012)。

 16歳以上のドイツ人(在住者)を対象に行った2000年の調査(Deutsches Aerzteblattで2001年に発表)[2]でも、回答者の83%が植物療法のような自然療法を好意的にとらえ、しかも一般医薬品による治療より安心だと考えていることが示されています。

 また、2010年にMMW-Fortschritte der Medizin(ドイツの主に開業医向けの医療専門誌)の医師読者を対象に行われたアンケート調査では、なんと回答者の98%が植物療法を含む自然療法に興味を抱いていることが分かりました[3]。開業医の59%はかなり頻回に、20%はしばしば、12%は時々の頻度で、患者から自然療法について質問を受けるとのことです。患者が植物製剤を望む場合は、ほとんどの医師がその希望に沿うように処方していると答えています。

 なお、このアンケート調査で植物療法などの希望が多かった疾患分野は、かぜ・気管支炎・鼻炎などの呼吸器領域、過敏性腸症候群などの胃腸領域、さらにアレルギー、疼痛、不眠、疲労感、うつ気分などでした。

植物製剤の費用は自己負担が原則
 疾病保険(日本の健康保険に相当)の支払いに関しては、一般医薬品と植物製剤で大きく異なります。2004年5月までは植物製剤は公的疾病保険の適用対象になっていましたが、それ以降はアルカロイド系の強い鎮痛薬などほんのごく一部(約3%)の植物製剤を除いては、すべて適用対象外となりました。植物製剤のほとんどが本来は処方箋を必要としない(Rezeptfrei)OTC製剤として扱われていましたが、一部の例外を除いて(※1)OTC製剤に対する公的疾病保険の適用がなくなったためです。さらなる医療費削減策の一環とされています。

 ドイツの公的疾病保険患者に出される処方箋は、用途に応じて紙の色が分かれています(※2)。OTC製剤である植物製剤への公的疾病保険の支払いがされなくなった2004年からは、「緑色の処方箋」(gruenes Rezept)が突如現れて患者も医師も驚かされました。

 本来は処方箋が必要ないOTC製剤の植物製剤ですが、医療機関で軽い症状のかぜの患者に植物製剤を勧めたとしても、患者も薬局もどの植物製剤か分からない場合が少なくありません。その混乱を防ぐため、医師が使いたい植物製剤名とその規格を記した「緑色の処方箋」が用いられることになったのです。この「緑色の処方箋」の扱いはメモのようなものですが、薬局の薬剤師にとっても重要な医師からの情報となります。処方箋を必要としない薬のための“処方箋”です。

 この「緑色の処方箋」を持って薬局で薬を購入しても、その薬代は公的疾病保険の適用対象にはなりません。制度が変更された当初は、「処方箋」で購入した薬の支払いが保険でカバーされないことに戸惑った患者も多かったようです。

 ドイツ国民の約9割が加入する公的疾病保険が支払いを行った全処方件数に占める植物製剤の割合は0.7%。金額にするとわずかか0.2%です(BPI Pharma Data 2013より)(図1)[4]。ほとんどの植物製剤はOTC製剤として自己負担で購入されている現状が分かります。

※1 12歳以下の小児、発達障害を伴った18歳以下の児、脳血管・心血管障害の予防のためのアスピリン製剤、甲状腺治療のためのヨード製剤、一般医薬品を使うことができない患者の心機能やメンタルヘルスに影響するごく一部の植物製剤など。

※2 処方箋の色と用途は次のように分けられている。【ピンク色】:公的疾病保険組合が認めた医薬品を記載する。原則的に保険がカバー。発行日から4週間有効。【青色または白色】:公的疾病保険で自己負担となる医薬品(避妊用ピルなど)を記載する。プライベート疾病保険では白色の処方箋を用いる。発行日から12週間有効。【黄色】:モルヒネ製剤など強い鎮痛薬を処方するのに用いる。発行日から7日間有効。

著者プロフィール

馬場 恒春

ノイゲバウア‐馬場内科クリニック(デュッセルドルフ)

1971年、カリフォルニア州へAFS交換留学。1978年、弘前大学卒業。弘前大学、ドイツのハインリヒハイネ大学(フンボルト基金研究員)、国立国際医療センター臨床研究部(流動研究員)、リューベック大学(フンボルト基金研究員)、東京大学、北里大学、福島県立医科大学の各研究室でお世話になった後、2003年に渡独。現在はデュッセルドルフ市内のノイゲバウア馬場内科クリニックに勤務。専門は内科一般。趣味はサッカー応援、大相撲観戦。

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