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知っていますか?植物療法のこと(1)
「合理的な」製剤と「伝統的な」製剤

2015/10/28
馬場恒春

図1 植物製剤の位置付け

 ドイツでは「植物療法」「植物系医薬品」「植物製剤」という言葉をよく耳にします。植物療法と聞くと、多くの方は森の中で新鮮な自然の空気に触れることや、草木の持つ癒やし効果による治療を思い浮かべるかもしれません。あるいは、ハーブ入りのお風呂で体を休め、心身のストレスを取り除く自然療法を想像するかもしれません。そもそも、ドイツの植物療法(フィトセラピー:Phytotherapie)とは何でしょうか?

植物療法とは
 最初から皆さんの予想に反するかもしれませんが、植物療法とは薬草(薬用植物:Heilpflanzen)から作られた薬(Pflanzliches Droge)を治療に用いることを指します[1]。実際の臨床の場では、ドイツ薬事法(Arzneimittelgesetz;AMG)およびEUの基準で認められた植物製剤(Pflanzliches Arzneimittel、Phytopharmakon)が用いられます。

 日本の漢方薬に似た側面がありますが、漢方のような独自の治療哲学に基づくものではありません。その意味では、ドイツのアントロポゾフィー医学()やホメオパシーなどの自然療法とも根本的に異なっています(図1)。ただし、患者の中には化学合成された一般医薬品では得られない「何か」を期待している方も少なくないので、そのような側面からの理解も必要かもしれません。

 四半世紀も前に私が初めてドイツにやって来た頃、訪れるオフィスのどこにも観葉植物の大きな鉢が置かれ、映画「ジャングルブック」を思い起こさせるような様子を見て、自分が所属していた医局の部屋との違いに驚き、また感激したものです。

 週末や休暇になると自然の豊かな森の中を散策する人が多いのを見て、「ああ、これがドイツの植物療法なのか」と当時は思ったほどです。実際、植物の持つ自然の力と病気に対する癒やし効果に重きを置いた、より自然療法的な治療を目指している人たちもいます。しかし、これは厳密には植物療法とは呼ばれていません。

 さらに、代替療法で用いる(薬用)植物と機能性食品(栄養補助食品)も、植物製剤とは全く別のカテゴリーに分類されています。代替植物療法で用いられる植物「薬」の多くは、効果と安全性の面での検証が不十分で、医師以外の指示で用いられることがほとんどです。また、栄養補助食品の場合、病気や症状に関連してアピールする広告は許可されていません。これらに関しては、また別の機会に紹介させていただくことにしましょう。

「合理的な植物製剤」は医薬品として承認
 では、植物製剤とはどういうものでしょうか? 薬草(薬用植物)またその一部から作られる「薬」は、生薬(Pflanzliches Drogen、Kraeutermedizin)の状態のものから、製剤化された完成品(Fertigarzneimittel)まで様々です。ドイツ(およびEU域内)では、医薬品として製剤化されたものを植物製剤と呼んでいます(1982年にドイツのボンで設立された植物製剤の団体Kooperation Phytopharmakaによる)。

 1976年に制定され1978年から施行されたドイツ薬事法[2]によって、生薬や植物製剤は医薬品として扱われるようになり、さらに現在はEUの植物製剤に関する指令にも沿って管理されています。アロマセラピーに用いる植物(油)や、ドイツ(およびEU)で認められていない植物はドイツ薬事法の管轄外で、医薬品としては扱われていません。<hr>

著者プロフィール

馬場 恒春

ノイゲバウア‐馬場内科クリニック(デュッセルドルフ)

1971年、カリフォルニア州へAFS交換留学。1978年、弘前大学卒業。弘前大学、ドイツのハインリヒハイネ大学(フンボルト基金研究員)、国立国際医療センター臨床研究部(流動研究員)、リューベック大学(フンボルト基金研究員)、東京大学、北里大学、福島県立医科大学の各研究室でお世話になった後、2003年に渡独。現在はデュッセルドルフ市内のノイゲバウア馬場内科クリニックに勤務。専門は内科一般。趣味はサッカー応援、大相撲観戦。

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