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平日なのに外来患者がまばらな「病院」
家庭医、専門医、病院―ドイツにおける分業体制

2011/05/24
馬場恒春

家庭医として働く、筆者の家内のDr.med. Neugebauer-Babaです。

 ドイツの医療制度について、古くから医薬分業体制が確立していることはよく知られています。しかし、案外と知られていないこともあります。その一つが、家庭医開業専門医・病院の三者の役割分担の厳密さでしょう。

一般外来は開業医院、入院は「病院」で
 「あれー、今日この病院は休みだったのかな?」――。平日火曜日の午前11時、患者でごった返すフロアを想像しながら8階建ての総合病院を訪れると、入口正面の受付カウンターの周りは人もまばら。10席ほどしかない待合椅子はすべて空席で、奥には売店、救急外来室、病棟へのエレベーターの案内板があるだけ。日本では「病院」と訳されるクランケンハウスKrankenhaus)ですが、実際は文字通り「患者の家」で、入院治療のための施設なのです。

 では、一般の外来(Ambulanz)診療はというと、基本的には開業医院(プラクシスPraxis)が担っています。プラクシスには、後述する家庭医と各領域の専門医(いずれも専門医資格が必要で、標榜は1領域のみ)によるものがあります。外来の診療はほとんどすべて予約制で、朝早くから順番待ちという光景は見られません。早く来たからといって、早く診てもらえるわけでもありません。

 外来通院中の患者に入院の必要性が生じると、プラクシスの医師がクランケンハウスと連絡を取って入院(または入院の可否のための診察)をアレンジします。患者が退院するときは、紹介元のプラクシスへ入院経過書が送られ、治療の継続を図ります。急患が直接クランケンハウスを訪れた場合でも、入院の必要がなければ、「応急処置を受けた後の治療はプラクシスで」ということになります。

 一方、クランケンハウスは入院治療の場です。極端な言い方をすれば、日本の病院から主たる外来機能を省いたような形態を想像すれば理解しやすいかもしれません。 そのため、クランケンハウスの医師の仕事は病棟(Station)勤務が主で、さらに紹介患者の診察、救急外来での業務、諸検査が加わります。例外として、公的保険の疾病組合から許可を得て、紹介患者の内視鏡検査外来を併設しているクランケンハウスもあります。なお、クランケンハウスには専門医を目指す卒後研修の場としての役割もあります。

著者プロフィール

馬場 恒春

ノイゲバウア‐馬場内科クリニック(デュッセルドルフ)

1971年、カリフォルニア州へAFS交換留学。1978年、弘前大学卒業。弘前大学、ドイツのハインリヒハイネ大学(フンボルト基金研究員)、国立国際医療センター臨床研究部(流動研究員)、リューベック大学(フンボルト基金研究員)、東京大学、北里大学、福島県立医科大学の各研究室でお世話になった後、2003年に渡独。現在はデュッセルドルフ市内のノイゲバウア馬場内科クリニックに勤務。専門は内科一般。趣味はサッカー応援、大相撲観戦。

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