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「診断戦略」を武器に、世界のどこへでも

2014/04/17
志水太郎

ハワイにかかる虹を車窓から撮影。場所によりますが、週に1度は帰宅時に虹が見られます。

 はじめまして、志水太郎と申します。私は現在ハワイで仕事をしています。今回KUROFUNetの記事を書かせていただくに当たり、どのようなテーマで書けば読者の皆さんにお楽しみいただくことができ、また役に立つかを考えました。

 KUROFUNetをお読みになる皆さんは、医療者として海外での仕事・生活に対して少なからず興味をお持ちの方と思います。日本での激務を続ける中、海外で仕事のチャンスを得ることはそれほど一般的ではないため、どこか身近ではない雲をつかむような話かもしれません。そこで第1回の今回は自己紹介も兼ね、そもそも私がなぜ慣れた日本の環境を飛び出したのかについて書きたいと思います。

脳外科志望から内科へ転向したわけ
 私が海外に目を向けるようになった最大のきっかけは自分の師匠との出会いでした。初期研修中に出会った感染症内科医の青木眞先生(サクラ精機株式会社・学術顧問)に、海外で勝負することの面白さを教わったのです。

 もともと私は6歳のときに医師を目指して以来20年間脳外科医を志望していて、ある脳外科医に弟子入りすることを考えていました。しかし人の出会いは驚くべき変化を若者にもたらすものです。2006年3月4日の夜、西新宿の高層ビルの47階。たまたま出席したのが、青木先生の感染症の講義でした。

 初期研修時代、私は脳外科を志望する上で内科を勉強することが基礎になると考え、科を問わず様々な勉強の機会を探していました。今でこそ勉強のリソースは豊富ですが、こと感染症診療について学べるチャンスは限られていた当時。感染症の講義は私にとって渡りに船でした。その船の中で、私は大きなショックを受けたのです。

 感染症診療に対して曖昧だった自分の考え方が、たった2時間の講義で見事に整理されていく。さながら目の前の霧がサーッと晴れるような、特別な感覚を味わいました。教育的示唆に満ちた講義に感激するあまり、講義の後で直にお礼を申し上げたことがきっかけで、青木先生というリアルな臨床のロールモデルを見つけることができました。その後も何度となく青木先生の講義に出席するにつれ、内科的思考や問題解決の手法の面白さに惹き込まれ、私は内科医に転向することを決めたのです。

 それからも様々な変化が私の回りに訪れました。青木先生の指導をはじめ多くの優れた尊敬すべき医師たちに出会う中で、「世界は広く、日本国内だけで臨床医として活動するのは何だかもったいない、せっかくなら国を問わずいろいろな場所で仕事をしてみたい」と思うようになりました。青木先生の師のお一人であるG.C.Willis先生の「世界中で臨床をすることが臨床医を鍛える」という言葉にも影響を受けたのだと思います。国によっては日本とは違う医療文化や独特の疾患分布もあり、その環境で闘う医療従事者も日本とは違った考え方やスキルで日々自分を鍛えているのだろう…そう考えただけで胸が高鳴りました。

「今更、また研修医?」
 日本で初期・後期研修を終えて卒後5年目以降、大学院や教育活動で日本と海外を往復するようになってからは、いくつかの大陸に出向くことになりました。当時はまだ他国での医療者資格はありませんでした。しかし調べてみると日本やアメリカでの医師免許を持っていれば、いくつかの国では診療が可能だと分かりました。

 その後、いったん日本に戻って都内の病院で1年間仕事をした後、2013年の夏からアメリカのハワイ大学内科に拠点を移すことにしました。立場はレジデント。日本の先輩方からは「今更、また研修医? 君はもうアウトプットをする年次だろう」と言われました。確かにそうかもしれません。ただ、私としては未経験の環境で自分をさらに鍛えたかったこと、異文化の前線がどんなものかを体験したかったこともあり、しばらく拠点を移すことにしたのです。行った者でないと分からない発見もきっとあると思いました。

著者プロフィール

志水 太郎

総合内科医(ハワイ大学内科)

東京都出身。2005年愛媛大卒。江東病院(東京都)、市立堺病院(大阪府)、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校、練馬光が丘病院(東京都)を経て現職。内科を青木眞、藤本卓司、徳田安春、Lawrence M. Tierney Jr.各氏に師事。専門テーマは診断戦略論。米国エモリー大学MPH。豪州ボンド大学MBA。近著に『診断戦略』(医学書院)、『愛され指導医になろうぜ?最高の現場リーダーをつくる』(日本医事新報社)。自身のブログ「夜空の星第二部」のほか、青木眞氏ブログ「感染症診療の原則」のコーナー「志高く」にブログ編集部員として連載中。顔写真撮影:板橋雄一

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