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生涯教育(CME)と利益相反(COI)のジレンマ

2010/10/25
日比野誠恵

 生涯教育(アメリカではcontinuing medical educationCMEといわれます)は、医師である限り、避けては通れないものです。患者さんの安全を考えれば、日進月歩の医学知識をアップデートしていくことは大変重要です。

 また、アメリカの場合、医師免許は州ごとに発行されますが 毎年の更新の際に規定の生涯教育CMEを修了していることが要求されます。ちなみにミネソタ州では、3年の間に75時間以上のCMEを行うことが要求されます。さらに、多くの専門医資格の再認定に当たっても、7~10年ごとの更新の際に似たような規定の教育を修了していないといけません。

 このようなわけで、CMEは臨床医として診療を続けていく上で必要不可欠のものです。幸い、アメリカのCMEのプログラムはバラエティー豊かに用意されており、受講者のワークライフバランスも考えられていることが多いので、さほど苦痛ではありません。

企業の援助がCMEを歪めた?
 医師の生涯教育というものは、1950年ごろから、大学病院のグランドラウンドのようなシステムから発展してきたといわれています。ところが、特に1950~80年代にかけて、CMEのプログラムに対して医薬品業界や医療機器業界からの大きな財政的援助が行われるようになったため、「バイアスのかかった情報がCMEに入ってきているのではないか?」ということが危惧されるようになりました。

 私がピッツバーグでレジデントだったころは、毎年結構な教育費が大学から支給され、教科書や医学雑誌の購入費用に充てていました。それに加えて、CMEの講義を受けた際に、製薬会社の“きれいなお姉さん”と一緒に、いいところで食事をさせてもらったこともありました。ミネソタに移ってからは、CMEの講義を受けた後に、NBAのティンバーウルブズやNFLのバイキングスの試合を観せてもらったこともありました(しかも、バイキングスの試合はボックス席でした)。私の親しい友人である心臓内科の医師は、ペースメーカーの講義を受けるためにオーストラリアまで行かせてもらったこともあるそうです。

 このようにして、過去にはCMEを利用して医師の処方に影響を与えようとする企業もありました。1990年代になって、企業の財政的援助による利益相反conflict of interestCOI)の可能性が次々に指摘されるようになり、そのような疑念を持たれるようなCMEは、大学病院内ではなくなっていきました。

著者プロフィール

日比野 誠恵

ミネソタ大学ミネソタ大学病院救急医学部准教授

1986年北里大学医学部卒。横須賀米海軍病院、セントジュウド小児研究病院、ピッツバーグ大学病院、ミネソタ大学病院を経て、1997年より現職。趣味はホッケー、ダンス、旅行など。

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