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アメリカ救急医療の明と暗

2010/02/17
日比野誠恵

救急部のベッドを眺めていると、救急医として経験してきた幾多の喜びと悲しみがよみがえってきます。

 今回は、少しシリアスな話題です。アメリカで救急医として働いている私が感じる、アメリカ救急医療の「明=よい部分」と「暗=悪い部分」についてお話ししたいと思います。日本ではあまり経験しないようなケースを5つ紹介しますが、よくよく考えてみると、明暗が表裏一体になっていることもあるようです。

 なぜか「暗」に関する話題がぽんぽん思い浮かんでくるので、こちらから始めましょう。

アメリカ救急医療の「暗」―ドラッグシーカーの患者
 日本でも覚せい剤を使用したタレントが捕まりメディアを騒がすことがあるようですが、ご存知のようにアメリカでの薬物乱用・依存は、タレントやプロスポーツ選手に限らず一般市民にまで浸透していて、実に根深い社会問題です。

 アメリカの大都市で救急医として働いていると、ほぼ毎度のシフトで薬物関連の問題を抱える患者に接することになります。最もありがちなのは、何らかの「ドラッグシーカー」(欲しい薬物を手に入れることを目的として受診する患者)であることです。慢性疼痛の緩和療法をきっかけとして薬物依存症になってしまった患者、闇のマーケットで働くドラッグディーラーの患者、家族や友人などに頼まれた“by proxyの患者”(代理人としての患者)など、その背景は様々です。

 ちなみにここでいう「ドラッグ」とは、だいたいモルヒネ系の鎮痛薬かベンゾジアゼピン系の鎮静薬です。日本では塩酸ペンタゾシンなどを乱用する患者が多いと耳にしますが、アメリカでもコカイン、メスアンフェタミン、ヘロインを乱用する人がたくさんいます。これらの薬剤は病院では手に入らないので、“ドラッグシーカー”というよりは“合併症を起こした患者”として見ることの方が多いです。 

 それでは、ケースの紹介に移りましょう。

著者プロフィール

日比野 誠恵

ミネソタ大学ミネソタ大学病院救急医学部准教授

1986年北里大学医学部卒。横須賀米海軍病院、セントジュウド小児研究病院、ピッツバーグ大学病院、ミネソタ大学病院を経て、1997年より現職。趣味はホッケー、ダンス、旅行など。

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