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「炎上」で幕を開けた今年のマッチング

2014/12/10
森誠

2014年3月のエモリー大学医学部マッチデイ。マッチングの結果が入った封筒を開封する正午直前の緊迫した状況です。テーブル前のおじさんはいち早く“聖域”に入ることを許されたカメラマンです。

 日本では10月、2014年度の臨床研修マッチング結果が公表されたと聞きました。アメリカではオンラインの出願システムERASElectronic Residency Application Service)が9月15日付でオープン。アメリカのプログラムで研修を志す国内外の医学生がいっせいに願書を送信して、半年に及ぶマッチングがスタートしました。

 昨年まではオープン日前に希望のプログラムを選択でき、オープンと同時に自動的に出願されるシステムが採用されていましたが、今年からは初日にログインして各自で送信しなければならなくなりました。そのせいもあってか、当日は前代未聞のシステムダウンに見舞われ、質問フォーラムがブーイングで炎上するなど一時パニック状態に…。

 システム復旧までの間はERASのTwitterアカウントのフォロワーが急増するなど、ネット上での情報収集が活発化しました。翌日早朝には無事に復旧し、私を含めて大方のクラスメイトは1日遅れで願書を送信できたようです。

「初日の出願」に皆が血眼になるわけ
 多くの研修プログラムの出願締め切りは10月半ばから11月終わり。何も初日に殺到しなくてもと思われるかもしれません。なぜ9月中旬のオープン初日の出願に皆がこだわるのでしょうか。

 これは実際に裏付けがあるかは定かでないのですが、学内の研修プログラムのディレクター陣によるオリエンテーションであった、選考プロセスに関する説明からうかがい知ることができます。「願書は受け取られた順に選考委員に読まれ、Yes/Maybe/Noの山に振り分けられる。そして、その後にYes/Maybeを見直し、その中から面接をオファーする学生を決める」。

 このようなプロセスを踏むため、提出が早いほどしっかりと願書を見てもらえる可能性が高くなる。また、先に読まれるほど比較対象が少ないので、Yes/Maybeの山に入る可能性が高くなる。アメリカの医学生が信じる“都市伝説”です。

 ERASからの通知によると、今年はトラブルがあったにもかかわらず、オープンから2日後の9月17日までに、国内外のERASアカウント所持者の100%が1つ以上のプログラムに願書を提出したそうです。効果の真偽は不明ですが、「初日の出願」が学生の間で重視されているのは間違いないようです。

あの手この手で面接日を素早く確保
 9月半ばに願書を提出してからの流れは、希望の科によって多少差がありますが、12月までには面接のオファー、または落選の通知が各プログラムからメールで送られます。オファーの場合は面接予定日が記載されており、学生はその中から都合の良い日を選んで返信します。

 面接の日程を考える際は、興味のある複数のプログラムの面接日が重なってしまうことがあります。面接のアポイントメントは早い者順なので、本当に興味のあるプログラムの面接予定日をあらかじめカレンダーに書いて組み合わせを考えておき、オファーがあったらすぐに返信できるよう準備している強者もいます。

 内科のように募集人数が多い科は、メールではタイムラグがあって返信までに希望の日程が埋まってしまうことがあります。そのため電話で返事することが多いのですが、スマートフォンに予定を入れておくとカレンダーの日程を見ながら通話できないため、素早く返事する目的のためだけにカレンダー付きの手帳を携帯する用意周到な学生もいます。あるいは、オファー受信専用のメールアカウントを作り、そのアドレスだけをスマートフォンにリンクさせている同級生もいます。無関係のメールに敏感に反応しなくてよくなるため、なかなかのアイデアだと感心しました。

どの医学部もマッチ率90%?
 面接が終わった後は、オファーがあったプログラムに関して自分が行きたい順にランクリストを作成し、NRMPNational Residency Matching Program)へ提出します。プログラム側も同様のリストを提出し、その2つが有名なアルゴリズムで処理されます(関連記事「研修マッチングのスクランブル、勝負を分ける1時間」参照)。面接に呼ばれなければ、ランク作成すらできません。

 余談ですが、医学部受験者に対する医学部のプロモーションとして、「当医学部では▲%の卒業生が志望のトップ3以内のプログラムにマッチしています」というフレーズをよく聞きます。ところが、このパーセンテージが90%を超える医学部が非常に多く、いったいどういうことかと疑問に思っていましたが、このフィルターの役割を担う面接がカラクリのキモでした。

著者プロフィール

森 誠

エモリー大学医学部(在学中)

兵庫県神戸市生まれ。日本の中学校を卒業後、医師を志して15歳で単身渡米。エモリー大学(undergraduate)で化学と声楽を専攻し、エモリー大学医学部へ。現在は医学部卒業を控え、心臓外科研修プログラムへのマッチングの準備に奔走中。研究分野はフォンタン手術を主とした先天性心疾患。趣味は歌とスノーボード。黒いピットブルを飼っています。

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