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心臓移植に参加した医学生が得たものは
究極の命のリレーに、ただ涙

2014/08/04
森誠

白衣授与式でクラスメートと記念の1枚(前列右端が筆者)。

 はじめまして。アメリカのジョージア州アトランタのエモリー大学Emory University)で、医学部4年生として学んでいる森誠と申します。日本で生まれ育ち、高校からアメリカで単身寮生活を始めて現地の4年制大学を卒業。そして、エモリー大学医学部に入学しました。現在は心臓外科医を目指し、研修病院を決めるマッチングに備え、ローテーションや願書作成をこなしつつ、先天性心疾患の研究を行っています。若輩者ですが、この場をお借りして、私の視点からアメリカの医学生の体験を皆様にお伝えできればと思います。

様々な特色の病院を経験できるローテーション
 2015年5月に卒業を控えた今、「医学部生活の中で一番の思い出は何か」という質問をよくされます。そのときに決まってお話しするのは、小児心臓外科実習での経験です。医学部3年次に行う病院実習(ローテーション)の紹介も兼ねて、ご紹介したいと思います。

 アメリカで医師の資格を取得するためには、4年制の大学を卒業した後、さらに4年間医学部に通う必要があります。学校ごとに多少の違いはありますが、最初の2年間で解剖と病態生理を学び、後の2年間は病院実習で各科を1~2カ月間ずつ回ります。内科、一般外科、小児科、神経科、精神科、産婦人科などでチームの一員となり、レジデントを手伝うかたちで患者を受け持ちます。学生は回診時に担当患者に関するプレゼンテーションをして当日の治療方針を提案し、上級医からのインプットをもらった後、レジデントにサインしてもらい自分でオーダーを入れます。このようにして、実践経験を積んでいくのです。

 エモリー大学には、5つの主要病院から構成される病院システムがあります。また、キャンパスに隣接する小児病院とも提携をしています。そのため、学生は各科の実習中、様々な病院において経験を積むことができます。最貧困層のためにジョージア州政府が運営する、いわゆるセーフティーネットホスピタルや、医療保険に加入して一定の支払額を満たす患者のみを受け入れる高度先進医療に特化した病院、あるいは復員軍人(veterans)を専門に治療する国営の病院など、様々な環境でトレーニングを受けます。

 上記6つの関連病院は平均490床。いずれも巨大病院です。特徴の異なる病院で幅広い症例に出合うチャンスがあるわけで、国内でも比較的まれな、このトレーニング環境を求めて訪れる研修医も少なくありません。

 外科のローテーションは2カ月間あり、半分を一般外科、残りを整形や心臓などの専門外科から選択することができます。当時は循環器内科医を志望していた私は、先天性心疾患の研究に携わっていたこともあり、提携病院の一つであるアトランタ小児病院Children’s Hospital of Atlanta)の小児心臓外科で専門外科実習を行うことにしました。最初は「心臓を直接診て解剖や血行動態に対する理解を深めたい」という程度の心構えだったのですが、第二助手として術者の隣から毎日手術を手伝っているうちに、その魅力の虜になっていきました。

 私の指導医だったコーゴン先生(Dr. Kogon)は、症例数、成績共に国内トップレベルであるアトランタ小児病院において、40歳代前半の若さで小児心臓外科のチーフを務めています。カリスマ性にあふれるハンサムガイで、集中治療のスタッフからは「ヒーロー」というあだ名で呼ばれる“闘将”でもあります。心房中隔欠損孔縫合などの比較的低リスクの手術は言うに及ばず、Fontan手術やNikaidoh手術などの超難関手術も顔色一つ変えずにこなす“Dr. K”は、隣から見ていてまさに超人そのものでした。

病院実習で臓器摘出を経験!
 冒頭で述べた医学部生活で最も心に残る出来事というのは、ある週末にかかってきた“Dr. K”からの電話に始まります。「今夜、心臓移植がある。よい経験になると思うから、フェローと一緒にドナーからの臓器摘出に行ってきたらどうだ」という話でした。

著者プロフィール

森 誠

エモリー大学医学部(在学中)

兵庫県神戸市生まれ。日本の中学校を卒業後、医師を志して15歳で単身渡米。エモリー大学(undergraduate)で化学と声楽を専攻し、エモリー大学医学部へ。現在は医学部卒業を控え、心臓外科研修プログラムへのマッチングの準備に奔走中。研究分野はフォンタン手術を主とした先天性心疾患。趣味は歌とスノーボード。黒いピットブルを飼っています。

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