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「学会講演がつまらない」なんて、もう言わせない
新しい教育方法をイノベーションする重要性

2012/04/04
岩澤真紀子

写真1 今年のUC Davis「感染症カンファレンス」は30周年記念。女性参加者にはスカーフ、男性参加者にはネクタイが配られました。スカーフの柄は、何と大腸菌!

 カリフォルニア州立大学デイビス校UC Davis)が主催する「感染症カンファレンス」は、私が毎年楽しみにしているカンファレンスの一つです。医学生涯教育(continuing medical education;CME)として、1月か2月に2日間かけて行われるのが通例で、医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師など様々な医療関係者がサクラメント周辺から集まります。

 このカンファレンスの主目的は感染症の知識のアップデートですが、主催者側が教育方法に工夫を凝らしており、新しい学習法のイノベーションの重要性に気づかされます。今回は、このカンファレンスでの体験を基に、アメリカの学会などで見られる参加型学習の工夫をご紹介します。

講演の前後にクイズを出題し、回答を集計
 参加型学習とは、講師の話を参加者が一方的に聞くという知識伝達型学習とは異なり、聞き手が主体的に参加することから学ぶ体験型学習のことです。クイズ、ゲーム、ロールプレイ、ディベートなど、様々な方法が工夫されています。 

 UC Davis「感染症カンファレンス」の講演では、いつもある決まった趣向が凝らされています。まず冒頭で、これから行われる講演内容に関するクイズが5問ほど出題され、聴衆の理解度がどの程度であるかを確認するのです。その際、「レスポンスカード」と呼ばれる、リアルタイムでアンケートを取りまとめることができるデバイスが使用されます。

 一人ひとりに配られたレスポンスカードで質問の答えと思われる番号ボタンを押すと、各番号の回答者数がスクリーンに映し出されます。演者は、この時点では答えを発表しません。しかし聴衆は、初めにクイズの答えを自分の頭で考え、他の聴衆の答えと比較することで、以降に行われる講演で集中して聞くべきポイントを知ることができます。

 講演が終わると、先ほどと全く同じ内容のクイズが出題され、再度アンケートが取られます。このときは、それぞれの質問ごとに演者が解説を加えていきます。時に、講演の始めと終わりのクイズで答えが変わらず、しかもその答えが間違っているという人がいます。集中して聞いていなかったのか、それとも講演の内容が悪かったのか…。

 原因はいろいろ考えられますが、仮に私が演者だったとして参加者の理解が講演後に深まっていなかったら、自らの講演内容を見直して反省することになるでしょう。聴衆の理解度を確認できるだけでなく、演者にとっても多くの聴衆からフィードバックが得られるという点で、これはとても良い方法だと思いました。

パフォーマンスとサービス精神
 数年前の「感染症カンファレンス」でのことです。ランチを終えて会場に戻ると、いきなり会場中にダンスミュージックが鳴り響きました。もちろん、会場の人々は「何ごとか?」という顔をしています。どうなったと思いますか?

 なんと、午後の部トップバッターの演者(医師)が激しくダンスを踊りながら登場したのです。アメリカの学会に参加すると遊び心にあふれた講演がまま見られるのですが、演者がハァハァ息を切らしながら話し始める講演は初めてでした。その演者いわく、「これから話すテーマが『睡眠』で、ランチの後で聴衆の眠気を誘うかもしれないから、のっけに刺激を与えてみた」とのこと。思惑はまんまとはまり、少なくとも私の周りで眠っている人は1人もいませんでした。

 別のカンファレンスでは、一般に見解が分かれている感染症のトピックを取り上げ、2人の演者(医師)がそれぞれ相反する見地に立って繰り広げるというディベートの企画もありました。

著者プロフィール

岩澤 真紀子

聖ジョセフ病院ソノマ郡薬剤部/米国薬物療法認定専門薬剤師(BCPS)

1995年東京薬科大学薬学部卒業後、99年まで東邦大学医療センター大森病院勤務。2006年南カリフォルニア大学大学院薬学部Pharm.D.課程修了。Harbor-UCLA医療センター(インターン)、カリフォルニア州立大学デイビス校附属医療センター(レジデント)勤務を経て、08年より現職。日本の薬学教育・薬剤師実務の水準向上に貢献することを目的に、海外で臨床教育を受けた日本人薬剤師のネットワーク「Pharm.D.クラブ(http://pharmd-club.cocolog-nifty.com)」を06年に結成。趣味は、ピアノ、ミュージカル・ジャズ鑑賞。

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