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「中規模病院における学生指導」という難題

2011/11/30
岩澤真紀子

 最近、カリフォルニア州では薬学部の新設が続いています。私がアメリカに来た2000年頃は4校にしかなかった薬学部が、今では8校にあります。新設の大学・学部の中には実務実習を2年かけて行うところも出てきており、各大学が実習先の確保にしのぎを削っています。

 私の勤務する聖ジョセフ病院は350床程度の中規模病院ですが、ここ数年、学生の受け入れ数が増加しています。しかし、大学病院などの教育病院とは異なり、当院および当院薬剤部は学生教育に理想的な環境とは言えません。私も指導薬剤師として学生指導にかかわる中で、様々な問題に直面してきました。

 そして今年7月、新しく赴任してきたマネージャーから、「あなたを指導薬剤師の責任者に任命するので、責任を持って大学との連絡係と学生教育を担ってもらいたい」との命を下されました。この機会に、アメリカの中規模病院における薬学生の教育環境と、限られたリソースの中で行う学生指導の工夫について取り上げてみたいと思います。

過酷になる日常業務の中で指導の余裕は…
 学生を指導するためには、現場にそれなりの人的余裕があるのが理想です。しかし、今の職場は薬剤師の流動性が高く、新人薬剤師や派遣薬剤師のトレーニング、辞めていった薬剤師の穴埋めなどに人手が取られ、学生を細かく指導する余裕はなかなかありません。管理職の方針も職務内容に影響を及ぼしており、個人の力でコントロールできない多くの問題に直面します。
 
 アメリカの病院でも、不景気になって採算性が良くない診療科の縮小、さらには廃止さえ起こっています。薬剤部においては、薬剤師が臨床業務を行っても日本の薬剤管理指導料のように病院の収入に直接つながる仕組みがないため、臨床業務が縮小される傾向にあります。当院で病棟専任薬剤師がいる病棟はICUと癌病棟のみですが、コスト削減のため、癌病棟への薬剤師の配属日数は以前より減らされています。薬の払い出し業務は縮小できないからです。

 臨床業務は薬剤師が患者や医師と接することができる機会でもあり、その縮小は、学生を受け入れる上でも大きな問題です。新しいマネージャーは臨床業務の拡充を望んでいるようなので、縮小の方針が今後変わることを期待しています。

指導薬剤師が日替わりの体制で実習は大混乱
 聖ジョセフ病院の臨床薬剤師は、臨床業務と調剤監査業務をローテーションで行っており、正式には「クリニカルスタッフ」あるいは「ハイブリッド」と呼ばれます。アメリカでは、指導薬剤師と薬学生の比率は1対1あるいは1対2が一般的ですが、当院ではハイブリッド制度によるローテーション・スケジュールのため、6週間の実習期間中に1人の指導薬剤師が専任で学生指導に当たることが難しい状況にあります。

 指導薬剤師が複数いて、しかも毎日入れ替わることもあって、今年7月以前は指導責任の所在がはっきりしませんでした。その結果、学生の中には、自分でスケジュールを決めて早退してしまったり、好きな指導薬剤師に合わせてスケジュールを変更したりする者が出てきました。点数を甘く付けてくれそうな薬剤師に評価を頼む学生もいました。そのほか、実習中に課題を十分に与えられない、逆に多くの指導薬剤師から別々の課題を次々に与えられた学生が優先順位を決められずに立ち往生するなど、いろいろな問題が生じました。

著者プロフィール

岩澤 真紀子

聖ジョセフ病院ソノマ郡薬剤部/米国薬物療法認定専門薬剤師(BCPS)

1995年東京薬科大学薬学部卒業後、99年まで東邦大学医療センター大森病院勤務。2006年南カリフォルニア大学大学院薬学部Pharm.D.課程修了。Harbor-UCLA医療センター(インターン)、カリフォルニア州立大学デイビス校附属医療センター(レジデント)勤務を経て、08年より現職。日本の薬学教育・薬剤師実務の水準向上に貢献することを目的に、海外で臨床教育を受けた日本人薬剤師のネットワーク「Pharm.D.クラブ(http://pharmd-club.cocolog-nifty.com)」を06年に結成。趣味は、ピアノ、ミュージカル・ジャズ鑑賞。

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