日経メディカルのロゴ画像

アメリカの専門薬剤師試験は「現場」が作る

2011/07/22
岩澤真紀子

 「免許更新の知らせが来たんだけれど、生涯教育の単位が足りない」と話している同僚がいました。でも、慌てる必要はありません。アメリカの生涯教育プログラムはバラエティー豊かなので、短時間で生涯教育単位を取得できる方法がいくつかあります。今回は、アメリカの薬剤師生涯教育と専門薬剤師制度についてお話しします。

アメリカの薬剤師免許は更新が必要
 薬剤師免許は州ごとに発行されますが、アメリカ全50州で免許更新制が導入されており、更新には生涯教育(continuing pharmacy education;CPE)単位の取得が義務付けられています。更新の頻度や必要とされるCPE単位数は、州によって多少異なります。例えば、カリフォルニア州では2年ごとに免許更新があります。更新に必要なCPE単位数は30以上(1年当たり15以上)と定められており、期日までに更新料150ドルと取得CPE単位数を記入した用紙を提出しなければなりません。

 なお、カリフォルニア州では、Accreditation Council for Pharmacy Educationアメリカ薬学教育審議会ACPE)またはPharmacy Foundation of California(カリフォルニア薬学財団:PFC)に認定されている生涯教育のみが更新単位として認められ、生涯教育なら何でも認められるわけではありません。

 CPE単位を取得する方法には、学会や大学での生涯学習講座、オンライン講座、薬学関連雑誌に含まれる生涯教育用の記事などがあり、有料のものから無料のものまでバラエティーに富んでいます。オンライン講座や薬学関連雑誌でCE単位を得ようとするときは、多くの場合、そこで出題された問題を解いて解答を提出する必要があります。

 そのほか、糖尿病、禁煙指導、緊急避妊薬、予防接種などの特定領域を集中的に強化することを目的とした「特定領域認定プログラム」もあり、これを修了すると、証明書とCPE単位の両方を得ることができます。新人の薬剤師に緊急避妊薬や予防接種のプログラムを修了することを義務付けている保険薬局もあります。

 CPE単位は薬剤師免許の更新・維持に必須なので、病院側からのサポートも手厚くなっています。生涯教育に対する補助の金額や手段は病院により異なりますが、私の職場では勤務時間の中で年間40時間の「CE(continuing education)時間」が認められています(学会参加費用は自己負担)。このCE時間を利用するには、参加する生涯教育の内容や所要時間を事前に提出して許可を得なければなりませんが、学会参加に限らず、自宅でオンライン講座を受講するという名目で申請することも可能です。

 以前、日比野誠恵先生が、医師の生涯教育と企業の援助について、「生涯教育(CME)と利益相反(COI)のジレンマ(2010.10.25)」の中で書かれていましたが、企業の財政的援助による利益相反については薬剤師の生涯教育においても問題になりました。

 製薬会社のスポンサードでレストランでの勉強会が開かれることもありますが、生涯教育における商業的サポートについてはACPEによりガイドラインが作成されており[1]、このスタンダードを満たさない生涯教育はCPE単位として認められないことがあるので注意が必要です。私の職場では、製薬会社から新規採用薬剤についての説明会などをしてもらうことはありますが、これの参加をもってCPE単位を取得することはできません。いつの間にか、薬剤の名前が入ったペンや付箋紙などを製薬会社が配ることもなくなりました。

BCPSの試験勉強は二度と御免です
 日本では最近、専門薬剤師認定制度が制定され、専門薬剤師への関心が高まっていますが、アメリカの専門薬剤師認定制度の歴史は30年以上に及びます。1976年、American Pharmacists Associationアメリカ薬剤師会APhA)から独立した第三者認定機構として、Board of Pharmaceutical Specialties(薬学専門職委員会:BPS)が発足しました。

 BPSの主な目的は、(1)臨床領域における重要な専門分野の検討、(2)専門薬剤師認定試験の標準の策定、(3)認定および再認定を志願する薬剤師の客観的な評価、(4)専門薬剤師認定の情報提供と調整です。専門薬剤師認定を与えることができる全米で唯一の機構とされています。

 現在、BPSの認定する専門分野は、(1)Pharmacotherapy(薬物治療学:BCPS)、(2)Oncology Pharmacy (癌:BCOP)、(3)Nutrition Support Pharmacy(栄養薬学:BCNSP)、(4)Psychiatric Pharmacy(精神科薬物療法:BCPP)、(5)Nuclear Pharmacy(核薬学:BCNP)、(6)Ambulatory Care Pharmacy(外来薬局薬物療法:BCACP)の6分野です。専門薬剤師試験は、年に1度、全国一斉に行われ、200問の選択式問題に対して試験時間は5時間となっています。1度合格すると7年間有効です(更新可能)。

著者プロフィール

岩澤 真紀子

聖ジョセフ病院ソノマ郡薬剤部/米国薬物療法認定専門薬剤師(BCPS)

1995年東京薬科大学薬学部卒業後、99年まで東邦大学医療センター大森病院勤務。2006年南カリフォルニア大学大学院薬学部Pharm.D.課程修了。Harbor-UCLA医療センター(インターン)、カリフォルニア州立大学デイビス校附属医療センター(レジデント)勤務を経て、08年より現職。日本の薬学教育・薬剤師実務の水準向上に貢献することを目的に、海外で臨床教育を受けた日本人薬剤師のネットワーク「Pharm.D.クラブ(http://pharmd-club.cocolog-nifty.com)」を06年に結成。趣味は、ピアノ、ミュージカル・ジャズ鑑賞。

この記事を読んでいる人におすすめ