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超多忙の中の調剤監査ミスで逮捕、免許剥奪

2011/06/20
岩澤真紀子

調剤ミスや投薬ミスを防ぐ工夫としてTallman lettering(一部に大文字を用いて、名称や見た目が似ている薬剤を識別できるようにする)が用いられています。*画像クリックで拡大します

 先日、思いがけないトラブルに遭遇しました。ICUから緊急の処方オーダーを受け取り、直ちにエアシューターで薬を送ったにもかかわらず、1時間以上経ってから「薬がまだ届かない」と看護師から苦情を受けたのです。

 何が起こったのかを調べてみると、薬がエアシューターの途中のどこかに引っかかり、届いていなかったことが分かりました。流通システムのエラーではありますが、薬を送ったときに念のための電話を1本入れていれば、エアシューターの故障を早く発見し、薬剤投与開始の遅延を防げたかもしれません。トラブル自体はささいなことでも、患者の命にかかわる大事に至ることがあり得ます。

 アメリカで薬剤師として働いていると、日本で働いていたときに比べて、「薬剤師の免許を守る」ということを強く意識している自分に気がつきます。一つひとつのトラブルが、次に同様のトラブルを繰り返さないための教訓になります。今回は、薬剤師の監督責任と薬に関連する医療事故についてお話しします。

新米薬剤師にも課される重い監督責任
 アメリカの病院薬剤師は調剤をすることは非常に少なく、処方監査、調剤監査、医師・看護師からの問い合わせへの回答、薬物治療モニタリングが主な日常業務となります。調剤を担うのは主に、ファーマシーテクニシャンやインターンです。(ファーマシーテクニシャンの役割については、「薬剤師を鍛え上げるアメリカのシステム」をご参照ください)。

 「調剤しなくていいなんて、楽でいいな」と思われた方もいるかもしれません。しかし、薬剤師にはファーマシーテクニシャンとインターンの監督責任があり、何か問題が発生した際には責任を問われます。

 薬局には必ず“pharmacist-in-charge”(PIC)と呼ばれる薬局責任者を定めなければならず、通常はディレクター(日本で言えば薬剤部長)やマネージャーがその役割を担っています。しかし、薬局責任者が不在の際は、その場にいる薬剤師に判断が任されます。

 新卒の薬剤師であろうと、薬剤師の免許を持っている以上は「経験がないから」などという甘えは通用しません。もちろん、初めは同僚のベテラン薬剤師たちが助けてくれますが、いかに早く独り立ちして薬剤師としての職務を果たせるかということは評価にもつながります。経験が浅い薬剤師にとって、こうした責任は重圧ですが、数々の問題の解決方法を身につけることで、薬剤師としての職務を果たすとともに、自らの免許を守っていかなければならないのです。

薬にかかわる医療事故は様々
 薬剤師としての職務を果たす上で、医薬品の性質や情報の検索方法を知っていることはもちろん必要です。合わせてとても重要なのは、薬に関する医療事故(medication error)についての知識を持ち、事故をどう防ぐかを考えて行動することです。一般に薬がかかわる医療事故と言うと、調剤過誤や投薬ミスを思い浮かべる方が多いかと思いますが、実際はそれだけではありません。

著者プロフィール

岩澤 真紀子

聖ジョセフ病院ソノマ郡薬剤部/米国薬物療法認定専門薬剤師(BCPS)

1995年東京薬科大学薬学部卒業後、99年まで東邦大学医療センター大森病院勤務。2006年南カリフォルニア大学大学院薬学部Pharm.D.課程修了。Harbor-UCLA医療センター(インターン)、カリフォルニア州立大学デイビス校附属医療センター(レジデント)勤務を経て、08年より現職。日本の薬学教育・薬剤師実務の水準向上に貢献することを目的に、海外で臨床教育を受けた日本人薬剤師のネットワーク「Pharm.D.クラブ(http://pharmd-club.cocolog-nifty.com)」を06年に結成。趣味は、ピアノ、ミュージカル・ジャズ鑑賞。

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