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診療に「十分なドイツ語能力」とはどの程度?

2015/06/04
金子英弘

 前回に引き続き、外国人医師がドイツの医師資格(Approbation als Arzt)を取得するための要件についてご紹介します。

求める能力は州が決める
 ドイツ医師資格取得の要件の一つとして「十分なドイツ語能力」を求められることは前回触れましたが、「十分なドイツ語能力」とは、どの程度の能力なのでしょうか?

 実は、この点は各州の医師会が認定基準を定めることとされており、現時点では州によって基準が異なっています。もっとも、おおむね各州とも、医師資格申請時にヨーロッパ共通フレームワークCEFR) B2レベルのドイツ語能力の証明書の添付を求めているようです。CEFRはTOEFLなどに比べて日本人にはなじみのない言葉ですが、CEFR B2レベルをTOEFLのスコアに換算すると87点レベルだということです。

 一部の州では、さらに高度なCEFR C1レベルの証明書を要求されることもありますし、申請書の受理後に医学関連のコミュニケーションに問題がないか独自に口頭審査が行われることもあります。

 私は、大学の第二外国語でもドイツ語を選択しておらず、留学を決めた段階では全くドイツ語が分からない状態でしたので、ドイツ語語学試験の突破が最大のハードルでした。本来であれば渡独前からドイツ語の勉強を計画的に進めるべきだったのですが、今になって考えると知識の大半は渡独後の勉強で得たものだったように思います。

 渡独後は、平日の朝から夕方までは病院のカテーテル室に勤務していたため、仕事の空き時間や平日は夕方から、週末はできるだけ多くの時間をドイツ語の勉強に使うように努力しました。勤務があるため試験対策として語学学校に通うことはできず、独学と個人レッスンが中心になりました。自分で選んだ道とはいえ、勉強仲間が周囲に全くいないというのは、精神的にも大きなプレッシャーでした。

 ただ、多くの留学生は、渡独直後は語学学校の集中講座に通って試験対策を行っています。個人的にお話を聞いても、試験に合格するという点では、語学学校で計画的に対策を進める方が確実性は高いように思います。

 ドイツの公的な奨学金制度であるドイツ学術交流会(DAAD)や、アレクサンダーフォンフンボルト(AvH)財団も、留学生には研究活動を開始する前の2~4カ月間、ドイツの語学学校でドイツ語の集中講座を受講することを推奨し、奨学生には別途、語学研修の資金やその間の生活費を全面的に支給しています。

 留学直後は何かとセットアップに手間がかかりますし、英語圏ではない国への留学なので、渡独後の一定期間、集中的に語学のみを勉強するということは、一般論として精神的にもメリットが大きいのではと思っています。

 ちなみに、CEFR B2のレベルなのですが、確かに求められるレベルは非常に高いものがあります。ただ、この試験に突破したからといって日常生活でのコミュニケーションに問題がないかというと、それはまた別の話です。

著者プロフィール

金子 英弘

循環器内科医(ブランデンブルグ心臓病センター・ブランデンブルク医科大学)

東京都出身。2004年慶應義塾大学卒。同大医学研究科にて基礎研究に従事後、心臓血管研究所付属病院で循環器臨床(主に心臓カテーテル治療)、臨床研究に携わる。14年4月より日本学術振興会海外特別研究員として、ドイツのブランデンブルグ心臓病センターに留学。ドイツ医師資格を取得し、TAVI、MitraClip、左心耳閉鎖などstructural heart disease interventionの手技・臨床研究を行っている。16年4月からは常勤スタッフとして勤務。専門分野は、心臓カテーテル治療、虚血性心疾患、心不全、心臓弁膜症。医師資格(日本・ドイツ)、医学博士、循環器内科専門医。趣味は読書(歴史小説)、スポーツ観戦(野球、サッカー)。

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