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群雄割拠のTAVIデバイス、日本市場の行く先は?

2015/04/23
金子英弘

 2013年10月、Edwards Lifesciences(以下、Edwards)社のSAPIEN XTについて保険償還がスタートし、日本でも経カテーテル大動脈弁留置術transcatheter aortic-valve implantationTAVI)が本格導入されました。今回は、世界的に急速に進歩・普及し続けるTAVIデバイスの市場動向についてお話ししたいと思います。

欧州市場を席巻するEdwards SAPIEN 3
 現在、日本で使用可能なTAVIデバイスはEdwards社のSAPIEN XTのみとなっています。しかしながら、欧州においては、既にEdwards社の新世代デバイスであるSAPIEN 3が2014年2月から使用可能となっています。

 私が留学している施設でもCEマーク取得と同時にSAPIEN 3を使用していますが、シースの小径化による安全性の向上、新たに備えたアウタースカート(フレームの底に巻いた繊維カフ)による弁周囲逆流(残存大動脈弁閉鎖不全)の減少など、パフォーマンスは明らかにSAPIEN XTを上回ります。そのため、当施設ではSAPIEN 3はTAVIのスタンダードなデバイスとして多くの症例に用いられています。欧州の他施設も同様のようで、昨年1年間はSAPIEN 3が欧州のTAVI市場を席巻し続けたと言えます。

 術後大動脈弁閉鎖不全症の減少と血管合併症のリスク低下をもたらす効果については、既に文献的にも報告されており[1]、今後世界的にTAVIの標準デバイスとしてSAPIEN 3が選択される可能性は高いと思われます。

ライバル社の次の一手に注目
 その一方で、2013年まではEdwards社SAPIEN XTと同等に用いられていたMedtronic社CoreValveは、SAPIEN 3の登場以降、当施設でも使用頻度が低くなってきています。やはりCoreValveの高い術後ペースメーカー留置率[2]を問題視する声は大きいようです。

 そうした中、日本ではCoreValveが2015年3月、ついに厚生労働省の承認を取得し、今後、実臨床で用いられることとなります。ペースメーカー留置は危惧される合併症ですが、self-expandableという特性による弁輪破裂のリスク低下などSAPIEN XTにはないメリットもあり、今後の動向が注目されます。

 同月に欧州では、Medtronic社の新たなTAVIデバイスであるEvolut RがCEマークを取得し、当院でもさっそく使用されています。Evolut Rでは、SAPIEN XTからSAPIEN 3への変化と同様に、シースの小径化(18Fr→14Fr)、self-centering機能や簡便なfully recapture機能により弁の正確な位置決めが可能となったこと、術後弁周囲逆流低減効果などでCoreValveを上回るパフォーマンスが期待されています。現在のところ、文献発表されたデータは乏しく、これからの結果を待たなくてはなりませんが、本デバイスによるMedtronic社の巻き返しにも注目です。

 また、Edwards社、Medtronic社に続いて日本でのTAVIデバイスの展開を計画しているのがBoston Scientific社です。同社のTAVIデバイスであるLotusは、2013年10月に欧州でCEマークを取得し、欧州全域で広く用いられています。アメリカでは、2014年9月から治験を行っています。日本でも今年中には治験の開始が計画されており、順調に上市されれば、SAPIEN XTおよびCoreValveに続く3つ目のTAVIデバイスとなります。

今後の日本TAVI市場の行方は…
 欧州、アメリカ、そして日本におけるTAVIデバイスの承認状況をまとめました(表1)。残念ながら、やはりこの分野ではデバイスラグがいまだに目立ちます。特に欧州と比較すると、主要なTAVIデバイスであるEdwards社、Medtronic社いずれの製品についても、現在欧州で用いられているデバイスの1世代前のものがようやく日本で使用可能という状況です。

著者プロフィール

金子 英弘

循環器内科医(ブランデンブルグ心臓病センター・ブランデンブルク医科大学)

東京都出身。2004年慶應義塾大学卒。同大医学研究科にて基礎研究に従事後、心臓血管研究所付属病院で循環器臨床(主に心臓カテーテル治療)、臨床研究に携わる。14年4月より日本学術振興会海外特別研究員として、ドイツのブランデンブルグ心臓病センターに留学。ドイツ医師資格を取得し、TAVI、MitraClip、左心耳閉鎖などstructural heart disease interventionの手技・臨床研究を行っている。16年4月からは常勤スタッフとして勤務。専門分野は、心臓カテーテル治療、虚血性心疾患、心不全、心臓弁膜症。医師資格(日本・ドイツ)、医学博士、循環器内科専門医。趣味は読書(歴史小説)、スポーツ観戦(野球、サッカー)。

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