日経メディカルのロゴ画像

ニーズ急増の次世代心臓治療を学びにドイツへ
冠動脈疾患以外にも応用が進むカテーテル治療

2014/06/27
金子英弘

ビアガーデンに設置された街頭モニター。サッカーW杯のドイツvs.ポルトガル戦に皆が見入っていました。

 皆さん、初めまして。金子英弘と申します。私は、この4月よりドイツのブランデンブルグ心臓病センターでの留学生活を開始しました。今回、ご縁があり、KUROFUNetへの連載という貴重な機会を頂戴しました。循環器診療に携わっている医師、コメディカルの方はもちろん、これから留学を志しておられる方や海外の医療現場に興味をお持ちの方など、様々な方々にとって有益となり、同時に身近に感じていただける連載を目指していきたいと考えています。

 この連載では、タイトルの通り、欧州で行われている最新の心臓病治療に関する情報はもちろんのこと、海外留学準備のための情報、日本とドイツの医療事情の違いなど、私の留学経験についてもお伝えする予定です。

なぜ、(アメリカではなく)ドイツ留学なのか?
 さて、「ドイツに留学をしています」と言うと、なぜドイツを留学先に選んだのか、疑問に思われる方もいらっしゃると思います。やはり現在、医学での留学というとアメリカをイメージされる方が多いと思うので。

 実際のところ、私が奨学金を得ている日本学術振興会の海外特別研究員で、医学分野においてドイツで研究をしているのは、全体のほぼ5%に過ぎません。その昔、北里柴三郎博士や森鴎外博士がベルリン留学していた時代とは異なり、今でもドイツで最先端の医学が行われているのか、疑問に思われる方も多いのではないのでしょうか。

 確かに、最先端の医学研究の多くはアメリカを中心に行われているのが現状です。しかしながら、私の専門である心臓病治療、その中でも特に私の留学テーマである僧帽弁閉鎖不全症大動脈弁狭窄症などの構造的心疾患structural heart disease)に対する最新のカテーテル治療structural heart disease intervention)に関しては、欧州が世界の最先端を走っています。

 機会を改めてご説明できればと思いますが、最新のカテーテル治療に関しては、欧州の方がアメリカに比べて、実臨床への導入が数年の単位で早く行われる傾向にあります。さらに、その欧州の中でもドイツでは、このような最新のカテーテル治療が極めて日常的に行われており、その症例数は他の欧州の国々を大きく引き離しています。

 次世代の循環器治療として世界の注目を集めるstructural heart disease interventionについて、臨床手技の面でも臨床研究の面からも知見を深めたいと考えていた私にとって、ドイツでの留学生活は理想的な環境でした。

適応広がるカテーテル治療
 このstructural heart disease interventionと呼ばれる最新のカテーテル治療は日本でも非常に注目を集め、今後の循環器診療における強力な武器となることが期待されています。

 もっとも、わが国では欧州のようなスピード感で実臨床に導入するというわけにはいきません。欧州から遅れること約10年の2013年10月、ようやく大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療(transcatheter aortic-valve implantationTAVI)が日本でも開始されることになり、多くの患者の治療に貢献するものと関心を集めています。

 また、世界の動向に鑑みれば、僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療や、心房細動に伴う脳梗塞の(再発)予防としての左心耳閉鎖術、難治性高血圧に対する腎除神経術など、カテーテル技術を用いた新しい治療法が日本でも検討され、導入される日は遠くないと思います。

 私は、structural heart disease interventionは、世界の中でも特に日本の医療現場において非常に有用な治療法なのではないかと思っています。その理由は、カテーテル技術の発展の歴史の中にあります。

日本でこそ必要なstructural heart disease intervention
 心臓カテーテル治療は、1977年にグルンチッヒGruzig)先生が冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)に対する治療法として開始してから、爆発的に世界中に普及しました。カテーテル治療自体が、外科的治療に比べて侵襲性が低く患者への負担の少ない治療法であることに加え、ステントなどのカテーテル周辺デバイスの開発も目覚ましい発展を遂げたことで、冠動脈疾患に対するカテーテル治療は世界の循環器診療において確固たる地位を築くに至りました。

著者プロフィール

金子 英弘

循環器内科医(ブランデンブルグ心臓病センター・ブランデンブルク医科大学)

東京都出身。2004年慶應義塾大学卒。同大医学研究科にて基礎研究に従事後、心臓血管研究所付属病院で循環器臨床(主に心臓カテーテル治療)、臨床研究に携わる。14年4月より日本学術振興会海外特別研究員として、ドイツのブランデンブルグ心臓病センターに留学。ドイツ医師資格を取得し、TAVI、MitraClip、左心耳閉鎖などstructural heart disease interventionの手技・臨床研究を行っている。16年4月からは常勤スタッフとして勤務。専門分野は、心臓カテーテル治療、虚血性心疾患、心不全、心臓弁膜症。医師資格(日本・ドイツ)、医学博士、循環器内科専門医。趣味は読書(歴史小説)、スポーツ観戦(野球、サッカー)。

この記事を読んでいる人におすすめ