
現在、マイアミ大学ジャクソン記念病院で働く移植外科フェローたち。3人が日本人、フィリピン、ヨルダン、アルゼンチンから1人ずつです。普段は誰かが手術室にいるか重症患者に張り付いていて、集まることも少ないフェローたちが一堂に会しました。なお、彼らは皆、やる気満々です(念のため)。
もうすぐ、今年の移植外科フェローのインタビューが始まります(レジデントのインタビューは既に終わったところです)。前回は外科レジデントの書類審査の基準について見てきましたので、今回は晴れてインタビューに呼ばれてからランキングされるまで、そしてレジデンシーとは少し違うフェローシップの選抜についてお話しします。
外国人医師には不利な評価項目も
レジデンシー・プログラム・ディレクターへのアンケート結果によると、平均5人の外科カテゴリカル・レジデンシー・ポジションに対して500人超の応募があり、インタビューに呼ばれるのは約60人となっています[1]。このうち、実際にランクされるのは4~5人ということですから、かなりの狭き門です。それでは、どういった項目を基準にランクを付けているのでしょうか。
ランキング順を決めるのに重視している項目としては、インタビューに呼ぶ際の基準と同じく、「推薦状」「専門科の成績」「表彰」「USMLE(United States Medical Licensing Examination)の点数」などが挙がっていますが、「アメリカの医学部卒業」「AOA(Alpha Omega Alpha:成績優秀な医学生の団体)メンバー」など、外国人医師には不利な項目も見受けられます。
また、インタビューで重視されているものとして、教授陣からの評価と同様に、レジデントやハウス・スタッフ(正式なレジデントではない)からの評価があります。インタビュー前後に彼らとの食事や雑談の機会があることが多いので、その際にも「常に評価されている」と意識しておく必要がありそうです。
こうして様々な項目が評価対象にされていることを考えると、試験での好成績はもちろん大切なのですが、普段から実習に真面目に取り組み、課外活動にも積極的で、優れた人間性を持った人物を探そうとしていることが分かります。もっとも、これは何もレジデントの選抜に限ったことではなく、アメリカの医学部入試や大学院入試を含む入試一般で同じようなことが言えますので、ある意味スタンダードな方式でしょう。
余談ですが、最近まで私たちのところで働いていたある医師は、2010年に起こったハイチ地震の被災者支援にボランティアとして行った際に、あるプログラム・ディレクターと現地で偶然一緒になったことがきっかけで、レジデンシー・ポジションを獲得できたそうです。
インタビューの際の具体的な注意事項や質問されやすい内容については、アメリカ医師会のサイト[2] などに載っていますので参考にしてください。最近では、動画で投稿されているジョブ・インタビューのスキットなどにも参考になるものがあります。
「サウスビーチ」が競争率を押し上げる
それではここで、私が所属するマイアミ大学ジャクソン記念病院での外科レジデント・インタビューの様子を見てみましょう。毎年、6人分のカテゴリカル・レジデンシー・ポジションに対して1000通を超える応募があり、そのうち150人ほどが4日に分けてインタビューに呼ばれています。
この数字を見ると、冒頭で紹介したNational Resident Matching Program(NRMP)発表の平均値[1]よりも競争率が高いように見えます。なぜでしょうか。面白いことに、NRMPはマッチング応募者へのアンケート結果も公表しており[3] 、外科レジデンシー・プログラムを選ぶ際の基準として、多くの応募者が「カリキュラムの内容」や「トレーニングの質・評判」に加え、「地理的条件」や「生活の質」も考慮しています。この傾向はアメリカの医学部卒業生に強く、外傷外科や移植外科などの豊富な症例のみならず、「サウスビーチ」という環境が多くのレジデント候補者をマイアミに引き付けているのは間違いなさそうです。
インタビュー会場では、シニア・アテンディング(上級指導医)とジュニア・アテンディングが2~3人で組になって、10か所ほどのステーションに待機しています。候補者は1人ずつ、いずれかのステーションに呼ばれ、緊張のインタビューを受けることになります。