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アメリカのナースはなぜ「できる」?

2011/03/31
喜吉テオ紘子

 友人の日本人医師たちは、口をそろえて「アメリカのナースはできるな」と言います。本当にそうなのでしょうか?

 実際のところ、知識や学習意欲においては日米であまり差はないと思います。けれども、実践力は異なりますね。私としては、アメリカのナースは「できる」と期待されているから、「できる」ようになるのだと思っています。

医師に頼ってばかりはいられない
 私は日米両方で看護師としての経験があります。もちろん、日本にいた頃は新人でしたので、中堅ナースとなった今と単純に比較はできませんが、日米間では看護師としての裁量や権限の大きさ、それに伴う責任の重さが違うと思います。そのため、アメリカでは看護師ごとの業務の範囲(表1)への考え方がシビアです。例えば、受け持ちの患者数が過剰となったり、慣れない処置を任されたりした場合、医療ミスを起こしたら自分の看護師資格が取り上げられてしまうので、「できません」と主張するのが当たり前の感覚です。

 また、私が勤務していた日本の病院には常に研修医がいて、患者の容態が変わったときは、電話でバイタルサインや症状を伝えた上で、「患者さんを診に来てください」と依頼することが大半でした。一方、現在の勤務先であるカリフォルニア大学サンフランシスコ校UCSF)のメディカルセンターでは、患者のバイタルサインや症状に加えて、より細かい身体アセスメントの結果、検査値、そして患者に何が起こっているかナースなりの解釈も医師(またはナース・プラクティショナー)に電話で報告します。

 例えば、患者の血中酸素濃度が低下していれば、バイタルサインを測定して循環器系に異常がないか確認した上、咳や喀痰の性状や肺音を聴診して所見を報告します。特にアセスメント能力は重要で、脳卒中や敗血症などのサインが見られれば即応する必要があるため、早期発見して介入することはナースの役割です(例えば敗血症であれば、静脈血の培養検体を得て1時間以内に抗菌薬を投与することがスタンダードとされています)。

著者プロフィール

喜吉テオ紘子

カルフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)看護学博士課程
/UCSF Medical Center 臨床研究病棟看護師

10歳から15歳までアメリカで過ごす。帰国後、国際基督教大学高等学校に入学。2000年聖路加看護大学卒業後、2003年まで虎の門病院分院の内科病棟(肝臓・精神科)勤務。2005年カルフォルニア大学サンフランシスコ校看護学修士取得(看護管理・医療政策専攻)。2005年よりカルフォルニア州Registered Nurseとして現職。2007年よりUCSF看護学博士課程に在籍。日米の医療安全・医療の質向上に興味を持つ。在米中は主に翻訳・投稿・学会発表を通じて日本の看護界とのコネクションをキープ。博士論文のテーマは「呼吸器関連肺炎(VAP)予防ガイドラインの活用促進因子の探求」。趣味は料理、ランニング、サイクリング、ワイン・テイスティング(カルフォルニア・ワインはいいですよ)。

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