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医師流出の穴を外国人医師で埋められるか?

2013/05/09
川口敦

津波に流されずに耐えた「奇跡の一本松」の復元作業が進められていた。(岩手県陸前高田市)

 先日、岩手県へ1週間の日程で、小児患者の診療支援に行ってきました。日本小児科学会および東北各県自治体が主体となった、東日本大震災後の支援プログラムの一環です。

被災地支援の現場で目にした現状
 私がカナダへ渡航したのは大震災が起こる直前のこと。以来、被災された方々をはじめとする日本の皆様がどのような時間を過ごし、どのようなご苦労をしてこられたのか、多くを共有することができず、焦りさえ感じていました。

 当然、マスコミやインターネットを通じて断片的な情報は得ていましたし、各学会が主導して震災直後から診療支援が行われていることも、友人などを介して耳にしていました。しかし、現場から遠く離れたカナダにいることから、表現しがたい「もどかしさ」を感じていたのです。海外の医療従事者の中には、同じような気持ちを抱えながら働かれていた方が少なくないと思います。特に急性期医療を専門とする方々は、居ても立ってもいられなかったのではないかと想像します。

 岩手(大船渡、陸前高田、遠野)を訪れたのは1週間という本当に短い期間でしたので、この2年間の現場でのご苦労や、現在提供されている診療のすべてを理解できたはずはありません。ただ、実際に目にしたことは、医師を含む医療従事者の不足に集約される現状でした。また、一人何役もこなしながら必死に診療に当たる、多くの医療従事者の懸命な姿でした。

 沿岸部では震災後に再開されないクリニックも多いと聞きました。開業医の数も不足する中で、多くの勤務医も、病院での外来・入院診療に加え「地域のお医者さん」としての役割をこなされているということです。

地方医療で活躍する外国人医師
 実はカナダでも地方における医師不足は深刻で、特にプライマリケアを専門とする家庭医や救急医の不足が、ここ数年大きな問題となっています。この傾向は、一般内科や一般外科といった「メジャー科」よりも、いわゆる「家庭医」や「マイナー科」(眼科や耳鼻科など)に顕著であるようです。2004年のデータでは、カナダの人口の21.1%が住む「地方」で診療に当たる医師は、登録されている全国の家庭医の16%。「マイナー科医」に至ってはたった2.4%です…[1]。

 地方における医師不足を一部補っているのが、海外の医科大学出身の医師たち、いわゆる外国人医師international medical graduateIMG)です。カナダは英語とフランス語を公用語としているので言葉の壁が比較的低いということも相まって、中東やインド、イギリス、アメリカ、中南米、さらにはフランス語を公用語とするアフリカ諸国などから、多くのIMGが地位とより良い待遇を求めやって来ます。

 公表されたデータでは、IMGは地方の家庭医の26.9%を占めています(都市部では22.6%)。もう少し詳細に見ると、北部準州(北極圏など)では家庭医の50%をIMGが占めている地域もあります[1]。カナダに限った話ではありませんが、「地方の医療は外国人頼みで成り立っている」と言ってよいのかもしれません。私も患者搬送などで頻繁に北極圏の街へ行きますが、そこで“砦”となっている診療所などでは、中東やアフリカ、インド出身の医師を頻繁に目にします。

著者プロフィール

川口 敦

アルバータ大学(Stollery Children's Hospital)小児集中治療クリニカルアシスタント 同大学公衆衛生大学院博士課程疫学専攻

大阪生まれの奈良育ち。2003年大阪大学医学部卒業。神戸市立中央市民病院(現・神戸市立医療センター中央市民病院)にて小児科、ER、麻酔などの初期研修、倉敷中央病院にて小児科専門後期研修。2007年から静岡県立こども病院に勤務し、小児集中治療科(PICU)の立ち上げメンバーの1人となった。2011年春より現職。PICUにおけるQuality Improvement、特に人工心肺、終末期/移植医療に関心がある。趣味はウインタースポーツと旅行。学生時代は「医学生というより、スキー好きのバックパッカーでした」。

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