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新米ドクター、「ひとりぼっち」の夜勤サバイバル(後編)
初めての心筋梗塞、DOAにパニック

2010/12/21
堀籠晶子

ドイツの救急車(レットュングスバーゲン)は青色灯を光らせ、「タートュー、ター、ター」という強烈なサイレンを響かせます。

 「夜勤デビュー」から1週間が経ち、早くも次の夜勤の機会が回ってきました。相変わらず忙しくしている最中、循環器病棟から呼び出されました。「患者さんが胸痛を訴えています。来てください」

これが“噂の”心筋梗塞?
 心電図を見た瞬間、「正常ではない」ことだけは直感しました。「どう見てもST上昇…。これが“噂の”心筋梗塞?」。医師国家試験を通して、心筋梗塞については何度も勉強してきたはずです。ニトロ、酸素投与…。夜勤デビュー前に同僚に確認して書き留めておいたメモのページを急いでめくります。「アスピリン1アンプル、へパリン…」。上ずった声で指示を出しますが、「投薬の指示はICUに移してからにしてください!」と看護師にぴしゃりと遮られてしまいました。

 その看護師の言う通りだったので、とりあえずICUに移さなければと思ったのですが、ICUは満杯でした。誰か1人を一般病棟に移動させなければベッドは空きません。いったい、救急の経験もない私がどう判断すればいいのでしょう。もうパニック状態でした。

 急いで上級医師(オーバーアールツト)に電話をしましたが、私の説明が悪いのか、緊急事態だということがうまく伝わりません。そのとき、ありがたいことに同僚が救急医の当番だったらしく、外から病院へ急患を搬送してきたところでした。ここぞとばかりに彼に心電図を見せると、血相を変えて、その後の対応をすべて引き受けてくれました。「ひとりぼっち」だった時間が、恐ろしく長く感じられました。

蘇生直後の急患が到着!
 「夜勤サバイバル」はまだ続きます。4回目の夜勤での出来事だったでしょうか、夜中の3時ごろ、「蘇生直後の急患が搬送されます!」との報告がありました。ICUの空気が一気に張り詰めます。50歳半ばとまだ若い患者で、人工呼吸器につながれて横たわっていました。心拍に応じて心電図モニターから発せられる「ピッ、ピッ」という電子音だけが、異常に耳に響いてきます。

 搬送してきた救急医から伝えられた情報は、「既往歴はよく分からない。そういえば、高血圧とか奥さんが言っていたかな」ということのみでした。バイタルサインが安定していることを取り急ぎ確認してから、わらをもつかむ思いで上級医師に電話を入れました。

 予想される診断と問題解決の方向性をある程度見極め、整理してから電話を入れれば話がスムーズに進むのですが、新米だった私はまたもやパニック状態に陥っていました。「蘇生後の急患です。とにかく来てください!」と震える声で懇願したのです。

著者プロフィール

堀籠 晶子

ミュンスター大学病院(消化器内科・内分泌学教室)・勤務医

上智大学大学院卒業。ドイツ人医師の夫と共に渡独。2004年にミュンスター大学医学部を卒業後、北ドイツにある総合病院の内科にて研修。2010年より現職。休日は、ドイツに点在するお城を散策したり、長く寒い冬にはゆっくりサウナに入ったりして、リフレッシュしています。

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