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モルヌピラビル承認、軽症COVID-19治療薬の選択肢は?

2021/12/28
倉原優(近畿中央呼吸器センター)

 2021年12月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する国内初の経口治療薬としてモルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)が特例承認されました。オミクロン株の市中感染が発生している都府県で優先的に配分されるようです。ラゲブリオ、気を抜くと思わず「ラブゲリオ」って読んでしまいますね。間違えないように注意しないといけません。

 多施設共同プラセボ対照ランダム化二重盲検試験(MOVe-OUT試験)1)において、重症化リスクのある非重症COVID-19の外来患者さんを対象に、モルヌピラビル800mgまたはプラセボを1日2回、5日間経口投与する群にランダムに割り付けたところ、割り付けられた1433人のうち28日後の死亡あるいは入院は、モルヌピラビル群が6.8%(709例中48例)、プラセボ群が9.7%(699例中68例)となりました(相対リスク減少率は30%)。数字のインパクトはそこまで大きくありませんが、死者数がモルヌピラビル群1人(0.1%) vs プラセボ群9人(1.3%)というのは良い結果だと思います。

 ただ、MOVe-OUT試験の対象は、ほとんどが非アジア系人種の肥満患者さんで、全員ワクチン未接種だったという点は差し引いて解釈する必要があります。80%の国民がワクチンを2回接種して、多くは肥満ではないとなると、どの程度効果を期待してよいものか。

 また、新薬ですから、懸念もいくつかあります。まだ安全性データが十分でないことや、ウイルスの変異を惹起する可能性があることです。モルヌピラビル群ではウイルスゲノムの変異やスパイク蛋白質のアミノ酸配列変化が観察されていることから、本当に集団ベースで安心して使える薬剤かどうかはまだ分かっていません。これは、インフルエンザ治療薬バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ)で生じた懸念と同様です。

 モルヌピラビルは、1回4カプセル(800mg)1日2回×5日間で合計40カプセルを飲み切って治療完遂となります。1患者さん当たり40カプセルが入ったボトルを1本渡されるイメージです。特定の薬局に限定されますが、COVID-19と診断した後に院外処方箋を発行すれば、COVID-19患者さんの自宅にモルヌピラビルを郵送してもらう仕組みも可能になるようです。

 本薬剤を使用もしくは処方する医療機関、あるいは調剤する薬局は「ラゲブリオ登録センター」に登録が必要で、カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)などと同じように依頼があった分だけ厚生労働省が配分(今のところ無償譲渡)するという形になっています2)。そのため、「COVID-19っぽい」という理由で安易にモルヌピラビルを処方することはできません。

 モルヌピラビルの対象は18歳以上であり、妊婦には禁忌です。患者の臓器障害の程度に応じた用量調整は不要のようですが、腎不全例での評価はまだなされていません。

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、インフェクションコントロールドクター。

連載の紹介

倉原優の「こちら呼吸器病棟」
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する医師。日々の診療や、患者さん・他の医療スタッフとのやりとりを通して倉原氏が感じたことを、呼吸器領域ならではのtipsを交えて語ります。呼吸器診療の息遣いが垣間見えるブログです。

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