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癌終末期の肺結核は見逃されている?

2020/01/17
倉原優(近畿中央呼吸器センター)

 かなり前の話なのですが、肺癌の終末期の患者さんに対して、研修医が喀痰抗酸菌検査をオーダーしてしまい、そこから結核菌が検出されたことがありました。感染症法上、結核病棟へ転棟せざるを得ず、そのまま結核病棟で亡くなられました。

 周囲からは「いやー、終末期患者さんに喀痰検査なんかするもんじゃないね」なんて話も出ましたが、私はこの一件について「少し怖いな」と思いました。

 基本的に終末期の癌患者さんには喀痰検査などしません。明らかに予後が改善する感染症であれば、喀痰検査を行う意義はありますが、結核を治療したところで予後が改善するというエビデンスはないのです。また、多くの施設では「無理に触らず、なすがままに」ということで、そのまま症状を緩和しながら看取る方針になっています。

 そのため、必然的に、終末期の患者さんが偶発的に結核を発症している事実を見逃すリスクがあると言えます。

 米国のテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター(680床)では、施設で年6例ほどの新規結核患者さんが同定されると報告しています1)。化学療法を受けているようなアクティブな癌患者さんでも、結核の発症には注意しなければならないということです。

 日本では、久留米大学において終末期の肺癌患者さんに喀痰細菌検査・血液培養を行った報告があります(表12)。抗酸菌検査は実施されませんでしたが、多種多様な細菌が検出されています。

表1 終末期肺癌における喀痰培養検査(文献2より引用)

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。08年から始めた自身のブログ「呼吸器内科医」をベースにした書籍『「寄り道」呼吸器診療-呼吸器科医が悩む疑問とエビデンス-』を、2013年に刊行した。

連載の紹介

倉原優の「こちら呼吸器病棟」
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。日々の診療や、患者さん・他の医療スタッフとのやりとりを通して倉原氏が感じたことを、呼吸器領域ならではのtipsを交えて語ります。呼吸器診療の息遣いが垣間見えるブログです。

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