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「酸性環境で生息できるから抗酸菌」ではない

2019/10/04
倉原優(近畿中央呼吸器センター)

 私は普段から結核や非結核性抗酸菌症などの抗酸菌感染症を診ているのですが、ヒトに対して病原性がある抗酸菌は100種類以上あります。

 さて、この「抗酸菌」の名前の由来ですが、「酸に抗(あらが)う」という意味で理解されていることが多いようです。私も研修医時代、「胃酸の中でも生きていけるから、抗酸菌というんだよ」と誰かに教えられた記憶があり、後期研修医時代もずっとそう信じてきました。

 ――しかし、これは誤りです!! 酸性環境で死なないから抗酸菌と呼ぶのではないのです。

 結核菌は、加温しないと染色されにくいという特徴があります。これは細胞壁にある長鎖脂肪酸(ミコール酸[図1])がとても厚く、色素の通過を妨げるからです。結核菌は多量の脂質を持った疎水性の細胞壁のヨロイに包まれているのです。乾燥菌体ベースで計算すると、実に60%の質量が脂質成分と言われているくらい、fat richな菌です。

 脂質があまりに多いので、結核菌がアニリン系色素で一度染色されると、この色素は酸やアルコールで脱色されにくくなります。実は、「抗酸菌」というのは、酸に対して抵抗性があるという意味ではなく、酸で脱色されにくいという意味が正しい語源なのです。

図1 ミコール酸の化学式(Wikipediaより引用)
分子量がとても大きい。

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。08年から始めた自身のブログ「呼吸器内科医」をベースにした書籍『「寄り道」呼吸器診療-呼吸器科医が悩む疑問とエビデンス-』を、2013年に刊行した。

連載の紹介

倉原優の「こちら呼吸器病棟」
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。日々の診療や、患者さん・他の医療スタッフとのやりとりを通して倉原氏が感じたことを、呼吸器領域ならではのtipsを交えて語ります。呼吸器診療の息遣いが垣間見えるブログです。

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