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太りたい患者心、痩せたい女心

2013/11/22

 「女心と秋の空」ということわざがあります。もともと「男心と秋の空」ということわざだったそうですが、現代では前者の方が有名でしょう。変わりやすい秋の空模様のように、人の愛情も移り気で変わりやすいという意味ですが、難しい女心を広く捉えて使用される場合もありますよね。今日のお話はまさにそんな一例。

 非結核性抗酸菌症(nontuberculous mycobacterial infection:NTM)という病気があります。私も毎週の外来で必ず何人か診察するというくらいコモンな疾患なのですが、どういうわけか痩せ型の中高年女性に多くみられるという特徴があります。

 中高年女性の肺の中葉や舌区に病変があり、気管支拡張症があるというような典型的なケースをLady Windermere's syndrome(ウィンダミア夫人症候群)と呼びます。この名称はOscar Wildeの戯曲『Lady Windermere's fan(ウィンダミア夫人の扇)』に由来します。古来より女性は公共の場で咳をすることはマナーが悪いものとみなされてきました。そのため女性は咳をしないように色々な工夫を凝らしていたといいます。

 この『ウィンダミア夫人の扇』の主人公はおしとやかな女性で、痰を吐くというはしたないことはできません。Lady Windermere's syndromeは、痰を吐くことができず、気管支をクリアにできない女性に起きるに違いないと考えられ、こう名づけられました(Chest. 1992 Jun;101(6):1605-9.)。ただし、劇中の主人公はこの病気にはかかっていません。

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。08年から始めた自身のブログ「呼吸器内科医」をベースにした書籍『「寄り道」呼吸器診療-呼吸器科医が悩む疑問とエビデンス-』を、2013年に刊行した。

連載の紹介

倉原優の「こちら呼吸器病棟」
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。日々の診療や、患者さん・他の医療スタッフとのやりとりを通して倉原氏が感じたことを、呼吸器領域ならではのtipsを交えて語ります。呼吸器診療の息遣いが垣間見えるブログです。

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