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患者の8割が「フリーアクセスは制限すべき」

2010/04/27

 「医療機関へのフリーアクセスは制限すべき?」とのテーマでまとめた前回の記事に対しても、多くの方からご意見をいただきました。本当にありがとうございました。

 フリーアクセスとは、診療所から大病院まで受診する医療機関を自由に選べる制度です。国民皆保険制度と並び、日本の医療を支える特徴的なシステムといえるでしょう。前回の記事では、そのフリーアクセスを制限すべきかを皆さんと一緒に議論するとともに、制限に対する「Yes」「No」を投票していただいたのですが、その結果は、私にとっては意外なものでした。

 フリーアクセスは、患者にとっては非常に便利な制度です。ただ、一方で、医療資源の効率的な活用という点からすると、ムダが生じやすい面があります。軽症例を含む大病院への患者集中が勤務医の疲弊を招いているとの指摘がありますが、これはフリーアクセスの負の側面と考えられます。そうした背景から、記事の執筆時点では、医師はフリーアクセスの制限に賛成し、患者は反対するのではないかと予想していたのです。

 ところが実際には、日経メディカル オンライン(NMO)、日経ビジネスオンライン(NBO)の双方で、「Yes(制限すべき)」が多数を占めました。NMO(医師)は89%、NBO(患者)は79%が「Yes」との回答でした。

患者が「制限すべき」と答えた理由
 9割が「制限すべき」と回答したNMOにおいて、医師がその理由として挙げたのは、「軽症患者が大病院にまで押し寄せ、勤務医の疲弊の一因になっている」の一点に尽きると言っても過言ではありません。

 一方、NBOでは、上記のような理由のほか、医療費の費用対効果の視点から「制限すべき」としたコメントも散見されました。少々興味深かったのは、ユーザーの視点で、大病院の混雑を解消するための方策の1つとしてフリーアクセスの制限に賛同する声が見られたことです。大病院で診察せずともいい軽い症状で来院している患者が多いと感じているのは、医師も患者も変わらないようです。

 ただし、NMO、NBOともに、英国の登録医制度のような厳格な手法で制限すべきとの意見はありませんでした。これは、フリーアクセスの今後のあり方を考える上で、非常に重要なポイントだと思います。寄せられたコメントは、「大病院の紹介状なし外来の窓口負担を大幅に上げればよい」「大病院が慢性疾患の外来患者ばかり診ていたら利益を確保できないように、診療報酬を変えるべき」といった、間接的な手法でのアクセス制限を求める声が大半でした。同様に、「大病院への受診は制限しても、開業医への受診は制限すべきではない」など、制度化するにせよ、柔軟なシステムを求めるコメントもありました。前回の記事でも書きましたが、私の意見も、ほぼ同様です。

 とは言え、患者側に、フリーアクセスの制限に全く懸念がないかといえば、決してそうではないようです。NBOへのコメントには、「大病院へのアクセス制限は、免許更新制度や新たな資格制度の導入など、開業医の質を担保するシステムの構築が大前提」といった声が多く見られました。大病院へのゲートキーパー(門番)機能を担うことになる開業医の診療能力に不安を感じるのか、「自由標榜制(掲げる診療科目を自由に選べること)は廃止すべき」との意見も寄せられています。このほかでは、「フリーアクセスを制限した場合、診療所自体がない空白地帯があれば大きな問題になる。医師偏在への対応も含め、自由開業制(診療所の開業場所を自由に選べること)は禁止すべき」といった主張も寄せられました。

著者プロフィール

木村憲洋(高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授)●きむら のりひろ氏。武蔵工業大学工学部機械工学科卒。国立医療・病院管理研究所病院管理専攻科・研究科修了。神尾記念病院などを経て現職。

連載の紹介

木村憲洋の「どうする?日本の医療」
日本の医療が抱える問題の解決策について、一般の方々と議論してみませんか?このブログは、医療を受ける立場の読者が多い「日経ビジネスオンライン(NBO)」でも公開しています。

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