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「たらい回し」は医師のせい?

2009/10/06

 医療崩壊といわれる現象は、救急医療の受け入れが困難な状態にある医療機関が増加してきたことにより、国民にもはっきりと認識されるようになりました。また、マスコミはこれまで、地域における救急受け入れが困難な状態を「たらい回し」という言葉で報道してきました。

 その代表例が、大淀病院事件です。2006年8月、奈良県大淀町立大淀病院で分娩中に意識不明になった妊婦が、移送を要請した県内外の18病院から次々と受け入れを断られた末に、大阪府内の病院で帝王切開により男児を出産した後、脳内出血で死亡しました。新聞やテレビで大きく報道されましたので、ご記憶の方も多いでしょう。

 一刻を争う救急医療の受け入れが十分に機能しない状況は、今でも大きな社会不安となっています。一方、医療側からすれば、「たらい回し」は「受け入れ不能」です。最近では「受け入れ不能」という言葉を使うメディアも出始めましたが、「たらい回し」という言葉は依然として一般的に使われており、そこには、救急問題の責任は多分に医師にあるというニュアンスが感じられます。

 そこで今回は、救急医療が崩壊した背景を探りながら、その原因について分析してみたいと思います。

救急搬送数は10年前より30%強増えている
 「平成20年中の救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査の結果」を見ると、2008年の救急車による搬送数は466万6727人です。そのうち、重症以上傷病者搬送事案が53万132人、産科・周産期傷病者搬送事案が4万542人、小児傷病者搬送事案が35万9557人、救命救急センター等搬送事案が54万1734人(重複あり)となっています。

著者プロフィール

木村憲洋(高崎健康福祉大学健康福祉学部医療福祉情報学科准教授)●きむら のりひろ氏。武蔵工業大学工学部機械工学科卒。国立医療・病院管理研究所病院管理専攻科・研究科修了。神尾記念病院などを経て現職。

連載の紹介

木村憲洋の「どうする?日本の医療」
日本の医療が抱える問題の解決策について、一般の方々と議論してみませんか?このブログは、医療を受ける立場の読者が多い「日経ビジネスオンライン(NBO)」でも公開しています。

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