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中医協の対立軸の勘違い

2010/02/12

 中央社会保険医療協議会中医協)による2010年改定の議論も2月12日で無事、最終日を迎えることができました。今回の議論を通して感じたのは、いまだに中医協で行われている議論が「支払い側と診療側」という対立軸に分かれていると勘違いしている人がいるようだということです。

 2002年の診療報酬改定を巡って起こった、日本歯科医師会による中医協委員への贈賄事件に端を発したいわゆる「中医協改革」を契機に、2006年改定以降、中医協が診療報酬の改定率を定めることはなくなりました。結果として、それ以前と以降とでは中医協の役割が大きく変わっているのです。

 昔の中医協は改定率も決めていましたから、まさに「医療費を抑制したい1号側(支払い側)」と「医療費を増やしたい2号側(診療側)」という基本的な構図が成立していたのでしょう。「中医協が改定率を決めるまで政府が予算を組めない」と言われるくらい、政治的にも強い権限を持っていたようです。

 しかし、今は違います。中医協の議論は医療費の総額が既に決まっている中で行われます。その中で、診療報酬単価を決めるということは、(お金の収支だけを考えるならば)「中医協は2号側(診療側)の中でお金の取り合いをする場」ということになります。どんな診療報酬の結果になろうとも、支払い側が出す総額は同じだからです。現在、中医協は、診療側の委員7人と支払い側の委員7人が向かい合ってそれぞれ一列に並び、にらみ合うように並んでいます。が、上記のことを勘案するならば、今の中医協では、診療側の7人が互いに向かい合って話し合うべきかも知れないと思うこともあります。

 とはいいながらも、医科、歯科、調剤、薬剤などそれぞれの外枠が決まっていますし、今回の改定から入院と外来のそれぞれの外枠も固められることになりました。つまり、それらの相互の間で診療報酬の合計額を取り合いことさえもほとんどできにくくなっているのが実情です。

 昨秋より診療所を代表するかたちで中医協の委員となった京都府医師会副会長の安達秀樹委員が再診料の引き下げの問題で、何度も繰り返し発言されたことの一つは、「事業仕分けや財務省」への不満でした。それらも中医協の中の議論とは無関係だということを前提に、「中医協を縛る外枠について不満を、中医協の中でも意見として言っておきたい」というものだったのです。

1号側委員は「医療費引き下げ」と関係ない
 医療費全体の外枠だけでなく、細かい枠組みまで作られた中で中医協が方向性を決定することへの是非は議論があるところだと思います。ですが、中医協自身が外枠まで決めなければいけなかった時代よりも、医療費の配分についての議論に集中できるようになったのは間違いありません。

著者プロフィール

勝村久司(中央社会保険医療協議会委員、高校教諭)●かつむら ひさし氏。1990年、陣痛促進剤を使った出産で長女を失い、その医療裁判を機に市民運動に取り組む。「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人。

連載の紹介

勝村久司の「『患者本位』とは何か」
医療事故や薬害の被害者団体などで市民運動を続ける一方、さまざまな職種の医療関係者とも交流を続つ勝村氏が、医療に強い関心を持つ「一般市民」の視点で本来あるべき「患者本位の医療とは何か」について語ります。

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