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医療を動かすのは改定率よりも、個別の点数

2010/01/27

 年末に診療報酬の改定率が報告され、年が明けて厚生労働省の事務方から最終の論点整理が出されるなど、いよいよ診療報酬改定の議論も大詰めを迎えました。昨年夏の政権交代から年末までの一通りの議論を踏まえ、これからは、決まった改定率を元に個別に点数が設定されていきます。

 初回のブログでもふれましたが、私は、全体の改定率以上に「何に重きを付け、価値観をどう変えるか」という個々の単価の設定の方が重要だと考えています。そもそも現在の中央社会保険医療協議会中医協)は、昔のように改定率を決める場ではなく、個々の単価を設定する場です。その意味で、これからこそが正念場といえるでしょう。

 どんなに大切なことだと皆が認識していても、そこに焼け石に水程度の点数を付けただけでは意味がありません。「これだけやれば改善できる、再建できる」というところまで持って行くべきです。中医協では、本当はそのドラスティックな変更が可能なはずなのです。

 例えば、「救急医療や、周産期、安全対策などを重視すべき」というのは、私もかかわった2006年改定以降、重点項目として言われ続けてきました。ところが、最終的には、いつもほんの少しだけ点数を付けただけにすぎませんでしたから、大きく動いていません。

 今回も「診療報酬本体の医科の改定率が1.55%だったからそれができない」と言われるかもしれません。ですが、極端な話をすれば、救急関係の診療報酬を50%増やして、代わりにそれ以外の診療報酬を下げることで、全体を最終的にプラス1.55%にすればいいのです。つまりたとえ全体の改定率が1.55%でも、50%アップが必要なところがあるならば、単価の設定を変えることで実現が可能だということです。ところがそこに十分に踏み込むことができていなかったのです。メリハリのついた点数配分をしたことで、多くの医療機関が救急医療を重点的に行うようになれば、日本の医療は動いていくはずです。

 逆に、全体の診療報酬を均等に1.55%増やすというだけだったり、「増えた1.55%分だけをどこに足すか」という議論では医療は動きませんし、中医協の存在意義がありません。2010年改定に向けた中医協の議論は、これから2月中旬を最終日とした残り1カ月の議論となります。中医協委員として、私が診療報酬改定にかかわることができる最後の機会になると思いますから、ダイナミックに動かす方向性を打ち出せればと思っています。

 改定率そのもの、あるいは医科、歯科、調剤の比率については、保険者の財政、社会保障全般や社会保障遺体の国家全体の予算の枠組みや、さらには日本のデフレ・インフレ率が関連します。ですから、政治で決めてもらえるのはありがたいことです。2004年改定までは、それを中医協で決めていたのですから、中身の単価の議論を十分にする時間はなかったでしょう。

 もっとも、安達秀樹委員(京都府医師会副会長)も1月13日の中医協の場で発言されていましたが、今回は改定率を政府が決めることになって初めて、医科、歯科、調剤の比率だけでなく、外来や入院の率にも踏み込んで定められました。病院に手厚く診療報酬をつけることを担保したいという思惑だと理解できますが、場合によっては、医科のグランドデザインを考えた提案をする際の制約になる可能性もあり、今後は議論のあるところとなるのかもしれません。

著者プロフィール

勝村久司(中央社会保険医療協議会委員、高校教諭)●かつむら ひさし氏。1990年、陣痛促進剤を使った出産で長女を失い、その医療裁判を機に市民運動に取り組む。「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人。

連載の紹介

勝村久司の「『患者本位』とは何か」
医療事故や薬害の被害者団体などで市民運動を続ける一方、さまざまな職種の医療関係者とも交流を続つ勝村氏が、医療に強い関心を持つ「一般市民」の視点で本来あるべき「患者本位の医療とは何か」について語ります。

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